「せつない胸に風が吹いてた」(サザンオールスターズ) コード進行雑感。

サザンのアルバム「世に万葉の花が咲くなり」(1992)所収、「せつない胸に風が吹いてた」のコード進行が楽しい。

このアルバムは、有名どころではヒットした、「涙のキッス」、CMにも用いられた「君だけに夢をもう一度」などがある。

ただ本アルバムが面白いのは、何より従来のサザン像を気持ちよく裏切ってくる点にあると思う。

サザンのアルバムはこの後も数多リリースされているが、私はこの「世に万葉の花が咲くなり」の幻想を追い求めて、サザンを聴いているような気すらする。

「せつない胸に風が吹いてた」のコード進行で思い出すのは、「希望の轍」である。

サビのコードがBm(虹のように〜)で始まるところが「希望の轍」のサビBm(遠く、遠く)を想起させる。

ただ、「希望の轍」が、初夏に、朝日を浴びながら疾走すると言うイメージなのに対し、「せつない胸に風が吹いてた」は夏が終わり、涼しい風が吹き抜ける秋のイメージに近い。

「希望の轍」と「せつない胸に風が吹いてた」は完全に別の曲(当たり前だ)だが、歌詞のコンセプトも近いように思う。

「せつない胸に風が吹いてた」で、「愛しい人も今はどこかでつぶやくmy old days」とあるのに対し、希望の轍は「愛しい君の名を誰かが呼ぶ」と、第三者の存在を仄めかす。

1998年の年越しライブでも、この「せつない胸に風が吹いてた」は、選曲されている。

ライブの冒頭、桑田は「コアで通な」ファン向けの選曲にしたと言って、まさにその場に集まる「コアで通な」聴衆を狂喜させた。

一旦ここまで。




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