「吉本隆明という共同幻想」(呉智英、筑摩書房)

論破の風景。
ガチの論破。 

本書「吉本隆明という共同幻想」は、「呉智英」評論の到達点であり、「戦後民主主義、戦後左翼に突きつけた死亡宣告書」かもしれない。

呉智英は独特のレトリックにかけては、屈指の評論家だが、今回の相手は、吉本隆明である。吉本ばななさんの父上だ。
(吉本隆明氏は、故人)
最初に断っておくが、私自身は吉本隆明氏の独特な味わいのある講演は好きである。

冒頭で、「論破」と書いた。
ここでいう「論破」とは、ネット論壇に転がっているような軽薄なものではない。データや、エビデンス、論証で、相手に技をかけていくガチの論破だ。

その結果、相手が構築した思想体系をも、打ち砕いてしまう。

「共同幻想論」とは何だったのか。
それを知りたい方には皮肉抜きで、本書が最良のテキストになろう。

いや、鮮やかに論破しているように見えるのは私が彼の読書の一人だからかもしれない。呉智英は、吉本隆明の作品を丹念に読み解きながら、極めて冷静かつ論理的に、吉本隆明の思想の本質、さらには戦後思想における大衆について、考察を深めている。

私自身としては、実は、吉本隆明批判という点にはあまり関心が無い。私の中で吉本隆明は、故人であり、戦後を代表する詩人、思想家の一人だ。

私は、如何なる本にも、実利を求める功利主義者である。

したがって、本書においては、呉智英の、思考回路に着目し、参考になる点はないかと思う。

とりあえず一旦ここまで。





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