えっ、あなたも『赤毛のアン』好きだったの!?
長年連れ添ってよく知っていたはずの友達を、ある日ふと新鮮に感じることがある。
今日は、幼なじみに3人のこどもとの留守番を頼まれた。「困ったときはいつでも頼ってね」とずっと声をかけていたものの、一人で頑張りすぎる彼女の力になれる機会はなかなかなくて。内心「私が独身で心許ないからかな」なんて寂しく感じていたりしたから、うきうきしながら家を出た。
今年生まれたばかりの赤ちゃんと、幼稚園生と、ずいぶん大きくなった小学生。
「〇〇くんと同じくらいの歳の時からママとお友達だったんだよ」と話しながら、一緒にパンを焼いたり宿題を見たりして過ごした。
私たち、こんなだったんだなあ。
帰りに駅まで送ってもらう車の中で、彼女が「お母さんと劇団四季を観に行ってきたんだ」と口にした。
「劇団四季!あの、キャッツとかライオンキングとかの!?」
私も舞台は大好きなんだけど、劇団四季とか宝塚とかって夢のまた夢で、限られた人だけが行けるもんだと思っていた。
「ううん、赤毛のアン。大好きなの」
「えっ、そうだったっけ?私も大好きなんだけど!!!!」
私は、今年から社会人大学生をやっている。この夏も、児童文学や少女小説にまつわるレポートを出したくて『赤毛のアン』と『若草物語』を読み返したばかりだった。
「誕生日とかクリスマスとかの度にお願いして揃えてたなあ。あと、足長おじさんとか!」
たぶん、当時の私たち、その本絶対貸し借りしてたよね。
赤毛のアンのこの台詞は、大人になった今でも心のお守り。
子供の頃に好きだったものを、ずっと好きな人は案外珍しくて(私はこのタイプなんだけど)、子供の頃に仲良くしていた相手とずっと気が合うとも限らない。
なのに、大人になった今でも同じものを大切にしていて、大人になるまでの道筋が違ってもお互いにいつの間にか同じものを好きになっていることがたまにある。
そんな時、私はそんな誰かと新しく出逢い直した気持ちになるのだ。
私たちは最近、ちょっとだけ似たような苦しい経験をして、彼女にはずいぶん助けてもらった。子供だったあの頃には想像もしてなかったような想いを、子供時代を知っている相手と共有する時が来るなんて。
「あっ、曲がり角だったんだ」と思った。