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アサヤンVol.17「上を向いて歩こう!!/下流芸人の逆襲!!」

五輪の同時刻でプロデューサー博士の狙いとは?

 「弱者には、弱者の戦い方がある。生きるコツがある。」
 今回のアサヤンの配信ライブを観終えた後の率直な感想である。

 折しも、同時間帯では東京オリンピックが開催中である。サッカーU-24の日本代表はフランスに4-0という素晴らしい結果を残し、連日連夜、日本国民に勇気や力を与えてくれているのは言うまでもない。それは「今よりも、もっと上に!もっと成長をしたい!」という人々にとってとてつもない影響を与えるものだろう。

 しかしだ、一たび視点を変えてみよう。かつて福本伸行さんの「最強伝説黒沢」という漫画があった。

  作品の冒頭からサッカーワールドカップで国民が熱狂するシーンから入るが、「自分じゃないのに、なんでこんなに喜べるのか?」と疑問を呈し、自分は工事現場で日々、働かなくてはならず「アジフライ」一つで日々の喜び悲しみを感じる中年男の悲哀が詰まっている。(特に第1巻はおすすめだ。)

 他にもハーツマインズ+ザ★ライトスタッフ「初期のいましろたかし」や吾妻ひでおの「失踪日記」には「モテない」「暗い」「仕事がない」など、アスリートが挑む更なる高みへの壁とは全くベクトルが違う「今日、どう生きたらいいんだ?」と切実な思いが詰まったエンターテイメントも存在する。

 さあ、今回のアサヤンである忌野清志郎さんの「上を歩いて歩こう」のOP曲と共にスタート。総合プロデューサーである水道橋博士からは「今回は、すべらない話であり、しくじり先生でもある。」「何度、聴いても面白い。落語のような話です。」との主旨が説明される。

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「オリンピックなんか見ませんよ」水道橋博士

選ばれし日本代表の下流芸人たち

 今回の見どころは博士の言葉に集約されていると言っていいだろうが、私なりの解釈も加え、もうちょっとだけ深堀をしたい。

 まず、今回の出演者を押さえておきたい。トップバッターを務めるのが元ワハハ本舗に所属していた、コラアゲンはいごうまん(51)である。「人志松本のすべらない話」ではMVS(Most Valuable すべらない)賞を取り、その潜入体験レポートには定評がある。また、雨上がり決死隊の蛍原さんの元相方でもある。

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「僕は小さっい人間です!(宮迫さんの騒動が起きた時)よっしゃーって思いました。」

 続いてがそいつどいつ竹馬(31)だ。今、勢いある若手芸人ニューヨークのYouTubeにて私も存在を知ったが、国立大学時代にヤンキーに憧れた話を披露する。

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「大学デビューして髪をレインボーにしました!」そいつどいつ・竹馬 

 3人目はチャンス大城(46)。吉本興業~大川興業~フリーランスを経て、今また吉本興業に所属する芸人である。その経歴を見ても、波乱万丈がにじみ出る。

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 「小学校の時、アトピーで顔に包帯巻いててミイラマン呼ばれてました。掃除箱に閉じ込められて、みんなに『ミイラ蘇る!』って言われてたんですわー」壮絶ないじめられ体験を笑いへ昇華・チャンス大城

 そしてトリを務めるのがアサヤンではお馴染み、うんこちんこのちんここと「よしえつねお(48)」である。「ヨロ乳首―!」のギャグでお馴染みの久本雅美さんらが所属するワハハ本舗において「下ネタが過激すぎる」という理由で解雇になった逸話を持つ男でもある。

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「鶴光師匠のラジオを聴いてました。」俺の下ネタのルーツ。 

 以上、4人全てをご存知の方はかなりお笑いマニアであろう。今回、サブタイトルには下流芸人の逆襲と付されているが、その類似言葉としては「地下芸人」と言う言い方もある。その辺の実情については番組司会を務めるジョニー小野Noteを参照いただきたい。

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地下芸人に辛辣な言葉を浴びせる男・ジョニー小野

 先に断っておきたいがサブタイトルに「下流芸人の逆襲」とあるが、今回、披露される芸はジョニー小野がNoteで罵るようなレベルの低いモノではない。他方、テレビではほぼ見かけることは出来ないが、珠玉のエピソードばかりである!ことは断言しよう。

すべらない話&アンビリーバボーな話の連続

 今回の見どころだが、まず一つ目は、ライブ冒頭、博士は「すべらない話」という言い方をするが、もう一つ加えれば「衝撃体験!アンビリーバボー」な話でもある。

 そのさわりを紹介すれば、、、

〇コラアゲンはいごうまんはコロナ禍で最初の緊急事態宣言において「BIG ISSU(ビッグイシュー)」(ホームレスが街角で販売する雑誌。ホームレス支援の一環)の販売員に実情を探るために、距離を縮めるのだが、やがてはBIG ISSUの販売員に支援をもらう立場になるコラアゲン。。。

〇そいつどいつ竹馬の国立大学の農学部に入り、「大学デビュー」。一躍、学部の人気者となるがさらなる上を目指し、工学部の目障りな奴(金髪坊主)をケンカでやっつけよう!とするも返り討ちになる話。そこから2年をかけ、ボクシングに取り組み、リベンジを目指すのだが。。。

〇チャンス大城の壮絶ないじめられ体験。(小山田圭吾のいじめを彷彿とさせるいじめられた側の目線が語られる。)さらには友達から3Pをせがまれた話、映画館で働いた時にオカマに言い寄られた挙句、拳銃を突き付けられ、SEXを強要された話。(水曜日のダウンタウンでも使われなかった話)

 全てが実話であると、同時に衝撃体験話は爆笑の連続であった。先に私は「最強伝説黒沢」や「初期のいましろたかし」などの作品を紹介したが、今回のネタにも通じるのが、狭い社会の生々しい小さなプライドや欲望がうごめき合っているのだ。話の最中に、時に、まぶせられる固有名詞は脳内にその場にいるかのような光景を浮かばせ、時にスクリーンに出される証拠写真が実話である裏付けをする。芸歴35年コラアゲンの給与明細書は爆笑ものであった。

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 「名前なんだっけ?」の連呼は俺の優しさ・高須D

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Wikipedia情報をなめんなよ・無法松

人生、死んでしまいたいときには下を見ろ、俺がいる!

 もう一つの見どころ、いや、見て欲しいのは今、苦しんでいる人々たちではないだろうか。「いじめ」「モテない」「仕事がない」「人間関係に苦しんでいる」etc.

 かつてビートたけしさんは「人生に期待するな」と言い、明石家さんまさんは「生きてるだけで丸もうけ」と言ったことは皆さん、耳にしたことがあるのではないか。オリンピックのメダリスト達の努力やストーリーはもちろん素晴らしいものであり、大きな力を与えてくれるのは言うまでもない。けれど、「今日、生きるのが辛い人生の時間」だってある。

 かくいう私だって、2014年に離婚を経験し、数年に渡って鬱っぽい症状に陥った。スーパーポジティブと思っていた自分が希死念慮に捉われるとは、若い頃には想像だにしなかった。夜中の1時に床につき、3時には寝汗と共に起きる。人を楽しませるテレビのネタを考えなくてはいけないが、もはやテレビはおろか、音楽、映画なども一切観たくなくなる。苦しいばかりだった。自身の成長で悩むのではなく、生きる希望を失った時の絶望感。家族に会えない辛さに、追い打ちを掛けるがごとく、仕事を失い無職になる恐怖。

 今、コロナ禍においてまた多くの人が不安を抱く現実ではないのか。貧すれば鈍するとはよく言ったものだと思う。離婚前から勝谷誠彦さんの「勝谷誠彦の××な日々」というメールマガジンを愛読していた。その中で勝谷さんは説いた。「ただ生きるな!善く生きよ」と。当時、鬱っぽい私は思っていた。「ただ、生きて何が悪いんだ!ふざけんなよ。」と怒りにも似た思いを抱いていた。その後、勝谷さん自身、「そこまで言って委員会」「スッキリ」と立て続けに降板し、テレビの仕事は干され、それが原因かどうかは不明だが、やがては鬱になっていく。そして復帰はするものの「重症アルコール性肝炎」で命を落とした。「ただ生きるな!善く生きよ」を唱えていた人が迎えた結末を見て、改めて思っている。「今、精一杯生きて何が悪いんだ!」と。

 これは推測ではあるが、コラアゲンはいごうまん、チャンス大城、よしえつねおの3人に関しては経済的に困窮する場面も人生で何度もあったのではないか?若さゆえの貧しさではなく、仕事の無さから来る貧困である。仕事はないのは、「社会に必要とされてない?」を想起させ、人の力を奪う。しかし、それでも尚、芸人としての芸を見せるんじゃ!と立ち上がる。時にそれは「俺の惨めな姿を見て、笑ってくれー」という芸人の矜持であり、博士が言う所の「すべては笑いに変えられる!」と芸人の強みでもある。

 同時にそれはアスリートとは違う「勇気のもらい方」ではないだろうか。さあ、俺を見て、笑ってくれ!下流芸人の人生を賭けた芸がここにはある!今は苦しいかもしれない、ひょっとしてかつての自分のように、些細な娯楽さえ、楽しめない心境の方もいるかもしれない。「あんたは、まだ健康が残ってるんだろ!」という声もあるかもしれない。このライブが全ての人に効く万能薬ではないだろう。でも、ひょっとしたら今、友達もいない、仕事もない、恋人もいないとい嘆く人もいるかもしれないが、ライブを観ることで「まだ、俺もやれる!」と一助になれば、きっと演者の皆さん、主宰した博士も嬉しいのではないだろうか。

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要注意!見れば、応援したくなる男たち!

 ライブの後半、よしえつねお(48)の交際中の彼女が登場。よしえつねおは下ネタを連発し、お世辞にも女性ウケをするキャラクターではないだろう。しかし、そんなよしえつねおの誰よりもファンである彼女の前で「幸せにします」と宣言するよしえつねおの姿にはグッと来るものがある。

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 ライブを終えて、コラアゲンはいごうまんに声を掛けた。
島津「コロナ前はどれぐらいライブをやってたんですか?」
コラ「年間で100本ぐらいですかねー。」
島津「その土地土地に主宰者がいるんですか?」
コラ「そうですねえ、規模はまちまちですが、、、(中略)今は出来ませんが。」

 薄々、感じていたがこの言葉を聞いてある種の確信を得た。彼らの不幸話は笑い話の側面ももちろんあるが、自分の弱さをさらけ出すことでどこか応援したい気持ちを生み出す力がある。事実、私もその一人だ。世の中、才能あるものもいるし、面白いやつもいっぱいいる。けど、売れてない人もいる。よしえつねおの彼女しかり、応援したくなる魅力が、詰まっているのが今回の出演者ではないだろうか?そう、今回のライブの最後の見どころ、ポイントはそこだ!アサヤンの公式スポンサーである乙村式ニンニクの「おもやいファーム」も元々はコラアゲンはいごうまんの支援者で、Clubhouseを通じて博士と知り合っているという経緯にもつながっていく。弱者の戦い方はここにあり!

 さあ、オリンピックもいいがアサヤンライブも楽しいぞ!今すぐクリックだ!

 そして次回は松村邦洋VSよしえつねおのモノマネ合戦だよ!博士が贈る渾身の企画がついに実現する!

いつも素敵な写真をありがとうございます。
 写真提供:中山友美 利根川亘
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執筆者:島津秀泰(放送作家)
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