芸能事務所の生き残り方 byキンコン西野
このnoteは2020年10月28日のvoicyの音源、『西野亮廣ブログ』の内容をもとに作成したものです。
voicyの提供:横須賀出身東京のわさび兄弟 寒くても頑張っているタンクトップのたっちゃん さん
どうも。キングコングの西野亮廣です。
お笑い芸人をしたり、絵本作家をしたり、国内最大のオンラインサロン『西野亮廣エンタメ研究所』の運営をしたりしております。
今日は、
「芸能事務所の生き残り方」
というテーマでお話しします。
本題に入る前に近況報告からさせてください。
昨日もお話しさせていただいたのですが、3日前に募集を開始した「西野亮廣オンライン講演会 〜マーケティング講座【上級編】〜」に期待が集まっているみたいで、昨日の段階では受講生が850人だったのですが、今朝見たところ、1700名を超えていました。本当にありがとうございます。
(こちら↓)
こちらの講演会は受講料が5300円となっておりますが、映画『えんとつ町のプペル』のオンラインムビチケ(前売り券)が「3枚」ついてくるので、受講料は実質ほぼ無料です。クラファンの手数料ぐらい。
当然、この講演会をやっても僕には利益なんてないのですが、僕からすると、そんなものよりも、皆で作った映画が一人でも多くの方に観てもらえる方が何千倍も何万倍も嬉しいので、まったく構いません。
モノを届ける為には、何が必要なのか?
人を集める為には、何をしなければならないのか?
今回の講演会では、エンターテイメントに限らず、全てのサービスに関わってくる問題と、その解き方について、かなり踏み込んだ話をしたいと思います。「上級編」とありますが、難しい言葉や、無駄な横文字は使わないので、ご安心ください。
というわけで、今日の本題です。
今日は「キンコン西野が芸能事務所を作るなら…」というテーマでお話しさせていただきます。
僕は表向きは吉本興業のタレントなのですが、それって表舞台に出る時で、僕の実際の仕事は9割ぐらいが株式会社NISHINOの仕事なんですね。
ただ、吉本興業とバチっているってことはなくて、吉本興業と一緒にした方がいい仕事は一緒にしますし、「ここは組まない方がいいよね」という仕事は組まずに、株式会社NISHINOでやらせてもらっています。そのへんは臨機応変に。
吉本芸人の中では珍しい「吉本愛」がある男です。
やっぱり、なんだかんだ言っても自分を育ててくれた会社なので、その恩は何倍かにして返さないと気持ちが悪い。
だからこそ、ダメな時はかなり強めに「ダメだ」と言います。
かなり強めに(笑)
吉本興業に限らず、あらゆる芸能事務所がおかれている今の状況を、めちゃくちゃフラットな立場から切り取ると……やっぱり、最大の権威であった「テレビ」を観る人が減ってきて、それぞれがYouTubeチャンネルを持ってしまって、「テレビに出たい」というタレントや、「レギュラー番組が欲しい」というタレントが減ってきた。
くわえて吉本興業の場合だと、コロナで劇場もやられてしまって……それによって「いや、劇場でネタをおろすより、ジャルジャルみたいにYouTubeでネタをおろした方が多くの人に見られるし、実入りもいいんじゃね?」というのがバレてしまって……今、全員の頭の中にあるのは「芸能事務所って本当に必要なの?」という疑問だと思います。
インターネットの本質は「直接購入」なので、どうしても「中抜き」の立場は弱くなってしまう。
そんな中、今、各芸能事務所が生き残りをかけて、あれやこれやと手を打っているわけですが、たとえば、こと吉本興業に関していうと、やっぱりこれまで「大仏商売」だったんですよね。
明石家さんまサンがいて、ダウンタウンさんがいて、ナインティナインさんがいて…という。もちろん、その才能を生んだのは吉本興業であることは間違いないのですが、「生んだ才能に乗っかり続けた」というのも、また事実。
それでも、ネットインフラが整うまでは、それでいけたんですよね。
タレントのスケジュールを切って、ギャラ交渉をして、時々、バーターで新人を挟んで…というビジネスモデルを長らくアップデートする必要がなかった。
それはそれで本当に凄いことなんだけでも。
だけど今は、ネットインフラ、もっと言うと、動画インフラやダイレクト課金インフラが整ってしまったので、もう「事務所に所属していないと世に出れない」みたいな時代じゃなくなった。
で、「これはヤバイ!」となって、今、慌てて、各芸能事務所デジタル化らしきものを進めているのですが、肌感でいうと7〜8年ぐらい遅い。
「UI、UX、何やそれ?」「オンラインサロンって、儲かりまんの?」という世界です。
本当に、何年も前に止まってしまった時計の針を今、慌てて動かしているから、ガタガタギシギシ鳴っているのが現状です。
頑張っているのは分かるのですが、そこに対する知識が圧倒的に不足しているから、流行っているものを見よう見まねで始めては見るものの、全然イケてないサービスを量産してしまう。
「そういうことじゃねえんだよ」の連続です。
一つ、吉本興業のクラウドファンディング「SILKHAT」に関しては、立ち上げから携わらせてもらった手前、今でも逐一「ここは違う、ここはこうだ」と口を挟ませてもらっているのですが、それ以外の吉本が仕掛けているサービスなんかは、ちょっとよく分からない。
救いは社外取締役で来てくださったビリギャルの坪田さんで、さすが坪田さん案件はイケてるなぁと思うのですが、ただ、坪田さんの身体は一つしかないので、さすがに吉本興業の全てのサービスをカバーすることは難しい。
吉本って、本当に大きな会社なんです。
ネットは特に適者生存の世界で、これまでリアル社会でどれだけ幅をきかせていようが、時代に合っていなかったら、1秒で駆逐されてしまうんです。
時計の針を長年止めていた人が見よう真似で参戦して生き残れる世界じゃないんですね。
今、コロナで食い扶持が減った各芸能事務所が、「新しい収入源を作れ〜」と躍起になっていると思います。
このへんの展開は手に取るように分かるのですが、まぁ、いろんな事務所さんが「オンラインサロン」を始めると思います。
始める理由は「オンラインサロンは、どうやら儲かるらしいから」です。
そして僕の見立てだと、ほぼ100%失敗します。
「なぜ、ダイレクト課金が成立しているか?」を構造で理解していないからです。
「認知」と「人気」の違いを本質的な部分で理解できていない。
今田さんや東野さん、この前だと華大さんとか千鳥さんとかが「そういうのは、知識の無い社員が旗を振らずに、西野に頼んでやってもらったらいいんだよ」と言っていたんですが、僕本人が言うのもアレですが、本当にそうだと思うんですね。
でも、社員は絶対に聞いてこない。
僕は日本の名だたる企業さんから社員向けの講演会のオファーを受けるのですが、吉本興業から頼まれたことは一回もありません。
自分で言うとカドが立つので嫌なのですが、でも実際問題、クラウドファンディングで日本で一番支援を集めていて、オンラインサロンで日本で一番会員を集めていて、なんか国内最大の広告賞を取っている。
…そんな奴が、自分とこの会社にいて、カジュアルにアドバイスを求められる距離にいるんだったら、アドバイスを求めた方がよくないですか?
渡辺直美ちゃんにインスタの運営方法を聞いた方がよくないですか?
カジサックやオリラジの中田君にYouTubeの勉強会を開いてもらった方がよくないですか?
でも、それをしないんです。なぜか?
「プライド」です。
芸能事務所とテレビというタッグはこれまで本当に強くて、タレントはあくまで「使う存在」だったので、「教えてくださ〜い」とは言えない。
現役のバリバリ第一線でやっている人が、隣にいるんです。これ、勿体無いでしょ。
僕が吉本興業の社長なら、西野にギャラ100万円渡して、なんばグランド花月に吉本の全社員を入れて、西野のマーケティング講座をやります。もしくは西野の書籍「革命のファンファーレ」あたりを全社員に配ります。
#どうせ西野は100万円を全額寄付します
これビッグマウスでも天狗でも何でもなくて、普通のビジネスマインドを持った人からすると、かなりフラットな意見だと思います。
で、今日の本題である「キンコン西野が芸能事務所を作るなら…」というところなのですが、やっぱり、今、一番時代を切り取れているのは、「結果を残しているプレイヤー」であることは間違いないんです。
そこに、あらゆる情報が集中しているので。やっぱり、その人が一番、知識がある。
その上で、僕が芸能事務所を作るのなら、トッププレイヤーに株を持たせます。
むしろ、事務所の方から頼みこんで、事務所の株を持ってもらう。
株を持ってもらうのが難しいというのであれば、顧問料として業務ごとに契約して、事務所の売り上げのパーセンテージ渡します。
吉本興業でやるYouTubeならば、顧問料として、カジサックやオリラジ中田君に僅かでもパーセンテージを渡します。
そうすると、カジサックやオリラジ中田君は、吉本興業のYouTubeを盛り上げようとして、他の吉本芸人のYouTubeチャンネルの宣伝を自発的に行ってくれるので。
これから「タレントに株を渡せる事務所」と「タレントに株を渡せない事務所」の明暗は大きく分かれてくると思います。
今日のオンラインサロンの記事は、ここから、さらに踏み込んだ話をしたいと思います。
よろ!
今日は「芸能事務所の生き残り方」について、お話しさせていただきました。
それでは、素敵な1日をお過ごしください。西野亮廣でした。
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2020年12月25日公開!
映画『えんとつ町のプペル』
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※オンラインサロン『西野亮廣エンタメ研究所』では、毎日、議論&実験&作品制作&Webサービスの開発&美術館建設を進めています。
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