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「貯金をしたがる人」の気持ちに寄り添ってみるbyキンコン西野

このnoteは2020年8月9日のvoicyの音源、『西野亮廣ブログ』の内容をもとに作成したものです。
voicyの提供:筆跡と魂パターンからあなたの使命をお伝えする創生のあくえりこ さん

どうも。キングコングの西野亮廣です。

お笑い芸人をしたり、絵本作家をしたり、国内最大のオンラインサロン『西野亮廣エンタメ研究所』の運営をしたりしております。

今日は、
「『貯金をしたがる人』の気持ちに寄り添ってみる」
というテーマでお話しします。

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僕は、いろんなプロジェクトを同時に進めていて、そこにはいろんなチームがあって、いろんな人がいます。
一つ確かなことは、「一人一人の気持ちを理解しないと、上手く回らない」ということです。

たとえば「やたら嫌味を言い続ける人」に対して、「アイツ、嫌なヤツだな」と思ってしまったらダメで、嫌味を言う人に徹底的に寄り添って「何が原因で、嫌味を言い続けるのか?」を考えなきゃいけない。
それが僕の仕事だったりします。

オンラインサロンの運営なんて、その繰り返しです。
6万9000人全員の気持ちを理解しなきゃ回せないんです。

そんなこんなで今日は「将来が不安だから貯金をしてしまう人」に徹底的に寄り添って、「なんで、貯金をしてしまうのかなぁ?」ということを考えてみたいと思います。

よく「貯金するな」という話って聞くじゃないですか?

まぁ、「貯金するな派」の言い分として代表的なところでいうと、まずは「普通預金の年利」の問題ですよね。

年利が0.001%だったら、100万円を一年間預けても、10円しか増えない。10円ですよ。ATMの一回の手数料で消える額です。

ていうか、そもそも「手数料」って変な話ですよね。
預金は「銀行にお金を貸している状態」なので、お金を返してもらう時に、手数料が取られるのって、ムチャクチャな話です。

友達に貸した1万円を返してもらう時に、手数料を取ってきたら、「借りといて、なんでお前が手数料をとるの?」となりません? 
銀行がやっているのはソレです。

話を戻します。

やっぱ年利0.001%というのは、増えていないのと同じで、「そんなにお金を増やしたいのなら、お金を使って、お金を稼いだ方が、お金が増えるよ」というのが「貯金はするな」派の言い分です。

あと、物価が上がっている問題もありますね。

地球上にある全ての商品の中で、値上げに抗っているのは「ガリガリ君」だけで、その他の商品の値段というのは上がり続けています。
消費税も上がり続けていますね。

たとえば、今はリンゴ1玉が200円で、銀行に1000円の預金していたとします。
銀行のお金を下ろせば、今はリンゴが5個買えるのですが、たとえば10年後。

年利が0.001%だったら、1000円を10年間預けていたら、10年後の銀行の残高は、ほぼ1000円です

一方で、リンゴは値上がりして、一玉500円とかになっている。

すると、2個しか買えないんですね。
 
「もともとは、リンゴを5個買える財力があったのに、貯金をしてしてしまったせいで、リンゴを2個しか買えない財力になってしまった」ということです。

要するに、資産が減っているんです。

「だから、貯金は辞めた方がいいよ」というのが、「貯金はするな派」の言い分ですね。

ここまで理論立てて「貯金という無駄使い」について説明されても、「う〜ん、とは言え…」っていう人っていると思うんですね。

「貯金するな派」からすると、中には「ここまで話を聞いて、何が『う〜ん』なんだよ!」と怒る方もいらっしゃるかもしれない。

たぶん、このままだと、どこまでいっても分かり合えないので、「それでも貯金をする人」に寄り添って考えてみて、彼らが抱えている不安を、もう少し細かく因数分解してみるといいかもしれません。

結論を言っちゃうと、おそらく彼らは「何かあった時の為に」という理由だけで貯金しているワケじゃないと思います。

たとえば、僕は普段、理屈が通らないことをいくつかやっています。

ネットショップでサイン本の注文を受け付けていて、毎日サインを入れて、レターパックに梱包して、郵便ポストに投函しているんです。

これをやるのに、結構な時間がかかるんですが、僕の時給を考えたら、「だったら、その時間を使って、オンライン講演会か、コンサルの一つでもやって、その売り上げの一部で絵本を買って、寄付すればいいじゃん。その方がコスパがいいじゃん」となる。

理屈で言ったらそうなんです。そっちの方が正解なんですけど、それでも僕は「いや、でも…」とか言いながら、今日もコツコツとサインを入れて、梱包して、郵便ポストに投函してしまう。

最近、自分でも面白いなぁと思ったことがあって……今、ニューヨークのオフブロードウェイでミュージカル「えんとつ町のプペル」を作っているんですね。

これ、僕が100%株主の株式会社NISHINOという会社が大元で旗を振って作っているのですが、僕は、ミュージカルの脚本の使用料(印税みたいなやつ)が僕個人に入るようにしているんです。

当然、作家には印税が支払われてしかるべきですが、今回の場合、ミュージカル「えんとつ町のプペル」の売り上げは(実質)僕が100%株主の会社に入っていて、そこから僕に脚本印税が支払われるって、何か意味あります?

作家として頑張った分のお金が欲しければ、早い話、会社から受け取る役員報酬の額をあげればいいだけの話なんです。

でも僕は「作家印税」という形で受け取りたい。
どうやら金額の問題じゃないんです。
形の問題なんです。

サイン本にしても、脚本の使用料にしても、理屈でいったら間違っているのですが、なぜ僕がそれを選ぶかというと……特に僕なんかは「成果が見えにくい仕事」なんです。

畑を耕す仕事だったら、耕した分が目で確認できますが、僕は朝から夜中まで考え続ける仕事で、それらは脳内で起きていることなので、「はたして昨日よりも進んだのかどうなのか?」が分からない。

精神衛生上、あまりにも不健康なんです。
不安なんです。

だから、たとえコスパが悪かったとしても、「進んでいることが確認できる仕事」を持っておきたい。

サイン本にサインを入れて、梱包して、郵便ポストに投函する度に、「ああ、確実に一冊届いた」と思える。

「作家印税」という形で受け取るようにしておけば、ミュージカル「えんとつ町のプペル」が一回上演される度に、「ああ、前に進んだ」と思える。

「昨日よりも、進んでいる」ということを確認することで、「大丈夫。大丈夫」と思えるわけですね。

たぶん、「貯金してしまう人」って、それだと思います。
たしかに「お金を増やす」というテーマで考えたら、「貯金」というアクションはコスパが悪いのかもしれません。

ただ、10円ずつでもいいから、増えるスピードはどうだっていいから、確実に増えていることを確認したいんだと思います。
「昨日よりも前に進んでいる」ということを確認して、気持ちを安定させたいんだと思います。

「投資」にまわすと、「預金残高」が一旦は減る訳けじゃないですか?
その後、2倍に増えようが、彼らにとっては、それは重要ではない。

あの預金残高の数字が上がったり下がったりするのは嫌で、超絶緩やかでいいので「常に右肩上がり」していることが彼らにとっては重要なことなのだと思います。

「貯金するな派」の人は、そこまで気持ちを汲み取って話しをすると、もう少し話が伝わるようになるかもしれません。
「世界は理屈だけで回っていない」という話です。

これは、あらゆる場面で起きていることなので、頭の片隅にでも置いといてください。

というわけで、
「『貯金をしたがる人』の気持ちに寄り添ってみる」
というテーマでお話しさせていただきました。

それでは、素敵な1日をお過ごしください。西野亮廣でした。


※オンラインサロン『西野亮廣エンタメ研究所』では、毎日、議論&実験&作品制作&Webサービスの開発&美術館建設を進めています。
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