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詩) 悲歌

   悲歌

テトラポッドの間から打ち寄せる波
お前の苦悶の心臓
じっと耐え、 慄(おのの)く心臓

振り返ることのおぞましさ
きらきらと照り映える海面
その鋭いガラスの切り口に慄きうずくまる

陽光に無残に曝され
叫びをも押し殺す傷口を
黒っぽい砂を敷きつめた汀に追い詰めてゆく

何気なく雲を浮ばせる白い空が
眩暈を起こさせ、攻め寄せてくる
あたかも超新星の衝撃波のように

お前の手は僕の袖を強く掴む
引きちぎれるかと思われるほど強く
呆然と立ち尽くす僕の袖を

狂った時間軸にお前は嘔吐する
嘔吐するためだけに食された全てを
そして、それを波がさらってゆく

キリストの十字架
お前の十字架
ふたつの重さは今や等しい

お前が神話となる日はいつのことか
凶器として生まれ変わる日は
ああ、いつのことか

けれど、今や記されるものは言葉ではない
変換された、近似的事実
まるごと放り出された近似的事実

春に向けて準備を始めた陽光
北風は何物かを消し払うのに躍起となっている
僕はお前の背中をさする

浜の砂は吸い込み、呑み込む
ねっとりと砕ける波の音も
お前のすすり泣きも

          (2009.2.14)

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