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詩) 明確

   明確

僕が歌うは、つまりは記憶
錆びた刀じゃ手首も切れず
それどころか、他人(ひと)に切っ先を
向けただけでぼろぼろと
見事なお笑い種だろう

僕の歩きっぷりがまた
これがまた見ものです
専門家のイセエビだとて
普段はやらない後じさり
誤解をしてはいけません
過去へ進むのじゃありません
未来へ向かって後じさり、さ

道端には例の奴ばらが
右や左と私に叫び
それにつられた道化者
あちらこちらとよろけつつ
びくびくおろおろ後じさり
道端の例の奴ばらは・・・
いっそ笑い死ねばいいのに!

僕のつけた足跡の先では
いつでも誰かが手を振って
僕もやっぱりにこりと笑って
手を大きく振るのだが
道端の例の奴ばらは
それを見るとなおさらに
腹をよじって転げ回る
早いとこ笑い死んじまえ!

道端の例の奴ばらめ
僕が決して止まれないのを
僕の、生命への隷属を
僕の時空への従順を

ちゃんと知っていやがって
僕はこぶしを振り上げたって
ますます笑って足をじたばた
早く笑い死んでくれよ!

右や左に今日もつられて
ふらふらよろよろ後じさり
泣きべそかいて後じさり
未来へ向かって後じさり

          (1982.3.3)

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