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橋守り隊長 『スヴェンさんの橋』

【あらすじ】
川のほとりの小さな村で、はね橋の番人をしているスヴェンさんはみんなの人気者。ある日、晩餐会に遅れそうな王さまの船がとおりがかり、スヴェンさんはあわててはね橋をはねあげますが、おそい、おそいと言って、かんしゃく玉をはれつさせた王さまが、はね橋を大砲でこなごなに壊してしまいます。

ダークグレイの作業服に黄色の安全反射ベスト。ズボンの裾は安全靴に入れる。ひさしと、でっぱりのあるリブが特徴的なアメリカンタイプヘルメット。そしてマスクにネックウォーマー。手にはクリップファイルを持ち、おそらく橋の写真が配置された資料をめくりながら打ち合わせをする。安全靴がアスファルトにすれる音が心地よい(ここは想像)。これがだいたい現在の橋守職の姿。かっこいい(心の声)。

『スヴェンさんの橋』のスヴェンさんは、はね橋の番人である。淡いグレーの立ち襟がついた水色とグレーのストライプシャツに濃い黄緑のノーカラージャケット。グレーのキュロットパンツに黒いブーツ。パトライトのような形で、黄色いリボンをまいた青い帽子をかぶり、パイプをくわえている。持ち物は、猫の時もあれば、バケツと箒、望遠鏡やランプのときもある。まいにち川のほとりの小さな村の人々の生活を見守っている。川にはまった王さまを助け、あったかいココアとシナモンパンをすすめるスヴェンさんはかなり懐が深い。苦境にあったときでさえ、人々に手を差し伸べることができる。周りのひとも優しい気持ちにさせる不思議な力をもっている。きっとスヴェンさんは川にはまった王さまにむかって、ざまぁみろ〜あっかんべーはしない人だと思われる。

現代の橋守職の方々とは、この小さな村の住人たちのような交流を普段みかけることはない。いまどき、橋のたもとで、急に水筒からお茶を差し出されたら通報案件になりかねない。世知辛いが仕方ない。それでもここの村人と同じく「こんな橋があってうれしい」と、ときどき考えていることを思い出す。

スヴェンさんの橋|1993年4月30日|アニタ・ローベル 文と絵|松井るり子 訳|セーラー出版(現・らんか社)

夫であるアーノルド・ローベルにすすめられ絵本制作を始める。ページごと違う色とりどりの模様でふちどられた絵は、物語だけでなく各ページごとのフレーム装飾も楽しめる。現在開催中のアーノルド・ローベル展にアニタ・ローベルさん絵の作品もある模様。関西は2022年に伊丹市立美術館に巡回予定。一年後まで楽しみに待とう。


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