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「英雄たちの選択」でとりあげてくれませんかね?『海外の建設工事に活躍した技術者たち 青山士・八田與一・久保田豊』

土木の歴史絵本第5巻。明治から大正にかけてすぐれた先人たちは、欧米の技術を取り入れ近代的な土木技術の基礎を築き、世界でもその力を発揮した新時代の日本人技術者たちを紹介。

加古里子さんといえば、『だるまちゃんとてんぐちゃん』のだるまちゃんシリーズや『からすのパンやさん」などのからすシリーズを思い出す。どんな話だっかたかなと、今回あらためて読み返してみたら、お話もさることながら、丁寧な描写と、物にたいする眼差しに強い熱を感じた。それもそのはず、東京大学工学部応用科学科卒業、工学博士、技術士(科学)児童文学研究者というプロフィールをお持ちだった。いかにも学究肌。かわいらしくて、ほわっと読み進めるというより、がっつり対象と向きあってしまうのは、その影響なのかもしれない。文と編集は緒方英樹さんという土木の専門家。途中から絵本ってこと忘れてる?というぐらい壮大なスケールになってきて心配になった。強い。いろいろ強い。土木愛が半端ない。今回、土木の歴史シリーズ全5巻を読み終えて感じたことは、「疲れた」と、えもいわれぬ「達成感」。走ったことはないけれどこれが”ランナーズハイ”というやつか!と思わせる清々しい気分になった。

第4巻で土木の伝道者と紹介されていた広井勇に師事した、青山士(あおやまあきら)・八田與一(はったよいち)・久保田豊(くぼたゆたか)の三人をとりあげている。それぞれ、パナマ運河、嘉南大圳(かなんたいしゅう)、鴨緑江の水力発電などの工事に従事した。

三人の共通点は「情熱」。ちょっと引いてしまうくらいまじめに取り組む姿勢。たくさんの実績のなかから苦労して抜粋し、凝縮されて短いエピソードになっているけれど、もっと知りたい、もっと人々の声が聞きたいと思いながら読んでいた。勝手にドラマ仕立てで妄想展開。映画「KANO」で大沢たかおが八田(与一)の役をしていて名前だけは知っていたけれど、ダム建設の部分はすっとばして観ていた。もう一度観てみよう。「KANO」も夢を持つ大切さ、諦めないことの大切さがメッセージだった。なんだ、このエネルギッシュな世界は。今、このなんだかモヤモヤした日々に欠けている、エネルギーを、あちこち回り回って思い出させてくれる一冊の本となった。

「黒部の太陽」の制作費は3億9000万円だったという。当時カラー映画1本の制作費が3000万円ぐらいだった時代に、約13本分の費用をかけて作成されていた。動員数は当時史上最高の約733万人、興行収入16億円を記録。そこまで超大作にしなくてよくて、再現ドラマぐらいでいいので、この5冊に登場した人々をテーマに「英雄たちの選択」あたりで番組を作って欲しい!!ヒストリーチャンネルでもいい。あのナレーションは似合うと思う。

『海をわたり夢をかなえた土木技術者たち 青山士・八田與一・久保田豊』|かこさとし 作|瑞雲舎

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