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過程という過去を吹き飛ばさない

『空の雲はちぎれ飛んだ事に気づかず!』
『消えた炎は消えた瞬間を炎自身さえ認識しない!』
『結果』だけだ!! この世には『結果』だけが残る!!

このセリフは愛すべき漫画「ジョジョの奇妙な冒険」の第5部に出てくるとあるキャラクターのセリフだ。この言葉は、僕には今の現代を揶揄しているように見える。

inquireで働き始め、自社媒体「UNLEASH」の記事を書くようになってから、スローデザインやスロージャーナリズムなどについて考える機会が増え、結果の前の過程を考えることに、より関心を持つようになった。

スローデザインとは、対象を経験するに必要な時間をとることで、表象的、記号的な消費を止め、対象の裏に隠されている時間の流れやストーリーをユーザーに感じさせるデザインのこと。スローデザインについては、UNLEASHで連載しているこちらの企画で詳しく紹介されている。

スロージャーナリズムとは、速報で事実だけを伝えるストレートニュースとは異なり、1つの事象に対して深く掘り下げ、解釈を足し、読者の思考を促すジャーナリズムのこと。有名なメディアに、2013年からスタートしているオランダの「De Correspondent」があげられる。2017年あたりから、アメリカを中心に本格的な英語化とグローバル化を進めている。

どちらの概念もスピードが早くなりすぎた世の中で、結果に至るまでの過程も重視しようぜ、という考えだ。結果にたどり着くには必ず過程があり、過程の中では思考の元に、複数の意思決定がなされる。

僕が「考えること」をテーマにここ1年くらい掲げていたのは、自分自身が「結果」ばかりを重視しすぎて、「考える過程」にあまりを目を向けてこなかった反省からなのだと、最近思い始めた。

そんな自分が出来上がってしまったきっかけは、小学生の頃。中学受験の算数の問題がわけわからなすぎて、数学が嫌いになり始めたのを皮切りに、文系街道まっしぐらな学生生活が始まったことに起因する。高校までの文系のテストはだいたい暗記すれば点数が取れる。応用が効かなくてもなんとかなる。国語に限ってはそうもいかないときはあるが、文章中に答えのヒントは全て乗っているので、なんとかやり切ってきた。

一方理数系科目はそうはいかない。公式を組み合わせ、問題に当てはめる過程を経て答えが出る。しかし、どうも過去の数学への苦手意識からか、理数系は決まって出来が悪かった。物理なんかは最悪で、数字に加えて記号まで出てくるもんだから発狂ものだった。クラス平均80点の物理のテストで、唯一30点代の点数をとったこともある。

文系科目でも歴史の論文問題はダメダメだった。教科書に載っている事実しか単語として覚えてないので、流れをストーリーで理解していないのだ。「4つの単語を使って説明せよ」みたいな問題が出たときはだいたい考えるのが面倒で白紙で出していた。

それでもテスト勉強を頑張っていたのは、通っていた学校ではテストの点数が壁に張り出される風習があり、高得点を出して、友達にすごいと言われたかったという虚栄心があったためだ。

「良いテストの点数」という「結果」ばかりをずっと追ってきたせいで、自分で考えて、自分で答えを定義しなければならない就活や社会人1年目は苦しかった。方法論だけビジネス書で学んでも、元々の思考力が浅いのでうまく使えない。学生時代の勉強はただ事実を覚えているだけで、自分の血肉になっているわけではなかった。「覚えている」と「理解している」は違うのだ。

物事を理解するためには、考える過程が欠かせない。インタビュー記事などを書いていても、わからないことは書けない。まずわからないことを考えて、自分がわかった範囲で書かないと、その記事は嘘になる。「出来上がった記事」という「結果」だけ出しても、その背後で自分で考えていないと、良い記事にはならない。

ニュースで入ってくる事実、学校の勉強で覚える歴史や公式、本に書かれているノウハウや教訓、知っていることを、知っているだけで留まらせず、その知識で対岸に渡る橋を作ることを意識してみるだけで、世界の見え方が変わる。

事実を構成している情報を、どれくらい奥深くまで見通すことができるのかが、これからの時代大切になってくると思う。目に入る情報が多すぎて、バイアスが入ったり、適当に因果関係を結びつけてしまいそうになるところを、グッとこらえて「本当にそうなのか」「この裏には何があるのか」と立ち止まって俯瞰してみる。

「結果」ばかりが溢れかえりがちな世の中で、「過程」にも目を向ける。そんな人が増えると、より滑らかな社会になるのではないかと思うのだ。


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