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いよいよ日本の環境政策も変わる? - G7環境相による2035年までの石炭火力発電所の段階的廃止合意を受けて -

4月29日、G7の環境大臣会合において、2030年〜2035年の石炭火力発電所の原則廃止が同意されると発表された。詳細は4月30日の声明で明らかになると思われるが、少なくとも日本のエネルギー政策にとっては大きな転換点になりそうだ。

G7の主要国の中で、アメリカと日本のみが石炭火力発電所廃止の明確な期限を明らかにしていなかった。つまり、新しく発電所を建設はしないが、しばらくは使い続ける方針を貫いていた。もちろん、アンモニア混焼等の技術導入や発電効率の良い石炭火力発電に限定して使用するなどの条件はついている。

石炭火力発電所はエネルギーの安定供給*や安価な価格、また、再生可能エネルギーの調整電源などの特徴を有していたため、簡単に代替することは難しい。(石油は中東諸国、天然ガスはロシア等のリスクが高い国々sから輸入しているが、石炭はオーストラリアなど国情が安定している国からの輸入となっている。)

今後はどうなる?

今回の会合結果を受けて、石炭火力発電を廃止した後の電源構成はどうなるのか?について、これは今年度中に発表予定の次期エネルギー基本計画の発表が待たれるが、大きなポイントは2つと予想する。

一点目は、原子力発電の活用だ。現状、経済産業省は2030年に22%前後の電力を原子力発電によって供給することを目標としているが、石炭火力発電を減らす分のうち、どれだけの割合を原子力発電によって補充するのか、は大きな争点になりそうだ。稼働する原子力発電所を増やす場合は、安全点検や地域自治体や住民への丁寧な説明も求められる。

もう一点目は、エネルギーコストの面だ。化石燃料を輸入に頼る日本にとって、化石燃料のうち最も安い石炭火力発電を推進することで電力価格を抑制してきた面がある。これが天然ガス等の別の化石燃料に代わると、燃料価格が高くなるため、どうしても発電コストが高くなる。昨今の円安等の影響も考慮すると、国民への負担が大きくなってしまう。これらの点を政府がどう考えるのか、注目していきたい。

何はともあれ、日本は石炭火力発電の明確な廃止時期を決めていなかったため、環境エネルギー政策においては世界各国から批判を受けてきた。今回の会合で、明確な年ではないが、2030~2035年という区切りが定まったことから、今後は廃止に向けた議論を進める必要が出てきた。簡単な課題ではないが、早急な気候変動対策が不可欠である中、ぜひPositiveな方向に議論が進んでいってほしい。

(4/30追記)
G7環境相会合の声明が発表され、石炭火力発電の該当箇所を原文確認した。
"phase out existing unabated coal power generation in our energy systems during the first half of 2030s or in a timeline consistent with keeping a limit of 1.5°C temperature rise within reach, in line with countries’ net-zero pathways;"

https://www.g7italy.it/wp-content/uploads/G7-Climate-Energy-Environment-Ministerial-Communique_Final.pdf

ざっくり翻訳すると、「2030年半ば、または、1.5度目標を達成するためのタイムラインに沿って、CO2排出量削減設備がない既存の石炭火力発電所を廃止する」となる。日本にとっては、「2035年まで以外のタイムラインがあること」、また、「CO2排出量削減設備や技術導入をしている発電所」であれば抜け道となりうる。上述したが、次期のエネルギー基本計画の内容で、日本政府の方針が明らかにされるはずであるため、注視していきたい。

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