うみ

2019年7月 自選短歌

会いたさが届くだろうか「会いたい」を「逢いたい」にして送信をする

漬ける手の皺を見ていた十年の時の彼方で味わう梅酒

強い風に耐えられなくて飛ばされたタオルは鳥になれただろうか

みずうみが傘の先から広がって溺れる前に探すつり革

家族には知られぬようにほたほたと湯船を海に近づけている

飛び立って静止画となる一瞬にプリンシパルは神の手を取る

次はいつ逢えるか知れぬひとといて日傘の影をはみ出せずいる

前髪が触れあいそうな距離だったふたりで眺めた画集の少女

灰色の空をひき裂く龍たちが光って奔る初夏のたそがれ

痣を見て蝶々というひとといる それからずっとわたしは花だ

※ラジオ石巻「短歌部カプカプのたんたか短歌」題詠「会」
 うたの日
 『NHK短歌』
 角川『短歌』

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