短歌連作「おかしなふたり」
タルトタタンしあわせそうに食むあなたタルトタタンになりたい、今は
歌舞伎揚あなたがこぼすひとかけらラグにひそんで足裏を刺す
カスタード吸うように食うそれだってシュークリームに変わりない午後
八つ入り蓋を開けたら一つだけ残されているかたい赤福
サヴァランをあなたは食わぬ 引き留めておけない時をフォークでつつく
いつもよりぬるい気がするひとりきり銀座ですする胡桃汁粉は
アヲハタのピーチメルバのジャムの蓋あなたが開けるはずだった蓋
呆気ない甘さがあった落雁はあっという間に崩れてしまう
できるならあなたの過去に舞い降りてクロカンブッシュを蹴り倒したい
水菓子に月が浮いてる 分け合えぬ夜をまるごと飲んだ冷たさ
※短歌連作サークル「あみもの」第十五号より。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?