本屋開業の種①出版取次で見た現実。

出版取次生まれ

自分の出版業界デビューは、出版取次だった。第一希望の業種で、本屋と出版社の両方を学べる。架け橋となれるこの業種に、とても魅力を感じていた。

入社してすぐに配属されたのは、出版社から雑誌や書籍を仕入れ、本屋へ配分する、という仕事だった。

担当していたのは児童誌・女性誌・生活誌・女性コミック誌など雑誌中心。

少し先に発売される雑誌の中身を知ることができ、なおかつ見本誌として届くので勤務時間に堂々と雑誌を読める、ということで、とてもワクワクする仕事だったが、
入社して半年ほどが経った頃、「出版業界の現実」を次々と目の当たりにしていくことに。

「こんな素敵な企画・有名人が表紙なら、きっと売れるに違いない。
 出版社も今回は部数を多くしているし、多めに仕入よう!」

と思って仕入れても、販売部から返ってくる言葉は 
「こんなにたくさん本屋に送らないで!」「仕入れないで!」
という厳しいもの。
 
当時からすでに「本屋で本は売れない」と言われていて、雑誌はその筆頭にあり、本屋にとっての「お荷物」と化していた。
 

見えてきた現実

当時は、出版社から雑誌を仕入れる仕事のほかに、本屋情報を整理する作業も行っていた。
そこで行う情報更新は、閉店の更新ばかり…
たまに、取引先変更、として他の取次からこちらへ移動した本屋さんの情報更新も行ったものの、新規店舗の情報は、私が担当していた3年間のうち、1、2店舗くらいと記憶している。
 
毎月、毎年、たくさんの本屋さんが閉店していく…
高齢化、という理由もありましたが、一番の理由は「経営破綻」。
 
どうして? なんで? 本を売るはずの本屋が、どうして潰れるのか?
もしかして、本を送っている取次も、本屋を潰している原因のひとつなのか?
 
仕入の仕事は、本屋の店主の顔が見えないので、
店主と取引を行っているのは販売部の方々に、どうやったら本が売れるのか?と相談してみた。返ってきたのは

「どうやったって売れないんだから。しかたないよ。」          という言葉だった。


しかたないって、なにが?
血気盛んな若者だった自分は納得がいかず、上司にも訊ねてみることに。

(つづく)

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