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「購入しないでください,セールは偽物です」20'1011の日記

スクリーンショットフォルダを漁っていたら、とある出来事を思い出した。ので、一ヶ月ほど前の話だけど書いてみようと思う。日記とは……



noteにアカウントを作る少し前、僕はマグカップを買おうとしていた。

・テクノロジーに無条件で甘える人間なので、思い立ってすぐにAmazonを開いた。コーヒーを飲みながら作業することが多いから、少し大きめで保温性の高いものが欲しい。あまり派手じゃない色だともっと良い。

・しばらくして、手頃な価格の黒い保温マグを見つけた。丸みを帯びたシルエットが可愛い。購入ページに飛ぼうと商品名をクリック……ん?

・商品名が……

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・え?怖い。

「購入しないでください,セールは偽物です」という名前で商品が登録されている。何だこれは。Amazonの規約に引っかかったのか?いや、しかし価格もレビュー数も正常に表示されている。登録が抹消されているわけでは無いようだ。一瞬狼狽えてしまったが、商品ページを開く。


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・ハッキングされた人の視界?

・ビックリした。結構ビックリした。マグカップを買おうとしてSFミステリーに遭遇するとは思わなかった。

・レビューや質問を覗くと、普通に購入した人達の感想が載っていた。数字の通りぼちぼちの評価で、荒れている様子は無い。みんな「購入しないでください,セールは偽物です」を購入してそれなりに満足しているようだ。

・僕以外の全員には、検索結果に載っていた黒いマグカップが見えているのか……?単純に考えたら普通だった商品ページが最近これに差し替わったって事だろうけど。何があったのか気になって調べるも、全く情報が出てこなかった。こういう認知に切り込んでくるホラーって怖いんだよな。

・そういうアートか?

・このセールは偽物である。これはパイプではない。

・偶然、世界の真実に接続してしまったのだろうか。実は全てのセールは偽物で、我々はいつもフィクションを購入している。配達員のアバターから情報のダンボールを受け取り、脳に刺さった電極の信号で架空の体験を錯覚しているのだ。コントロールされた五感は新品のマグに注がれたコーヒーと優雅な午後を捏造する。ベッドに併設された機械のランプが数回明滅すると、微量のカフェインがヘッドギアを経由して寝たきりの「体験者」に輸液される。ここは全てが偽物であるが故に、完璧なワンダーランド。

・はい。



・話を戻して、今日。改めてAmazonであのマグカップを調べた。何か変わったことは無いか、そもそもアレは何だったのか気になったから。

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・お?

・相変わらず名前は「購入しないでください」のままだけど、商品画像と説明文は正常に表記されている。しかも結構いい感じだ。

・ある程度キチンとした体裁になっている分、依然として名前がバグってるのが異質だけど。販売の担当者が複数の人格を持っていて、現在は「売りたい人格」が優勢なのかもしれない。

・今気づいたけどレビュー増えてる。凄い。


・結局実体は掴めなかったけど、こういう想像力が刺激されるインシデントは大歓迎だ。インターネットはどんどん有機的になってる気がするから、無機質で警告文チックな文体が魅力的に見えた。どことなく海外インディーズゲームの日本語訳っぽいのも良い。実際翻訳なんだろうけど。


・……あっ。

・謎に夢中で、マグカップ買うの完全に忘れてた……。



・買おうかな、これ。シルエットが可愛いし。

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