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これを最後に〜甲南医療センター專攻医自死から考えたこと

 日本という国は、「人柱」が立たないと動かない国だなあとつくづく思う。

 例えば…。

2015年12月25日 - 新入女性社員が社員寮から飛び降りて自殺(過労自殺)した(享年24)。この社員は、東京大学を2015年3月に卒業し、同年4月に電通に入社して、電通 東京本社 デジタル・アカウント部に配属されてインターネット広告を担当していたが、同年10月1日付で本採用となってから仕事量が急増した。遺族側弁護士の推計によると、1か月の時間外労働は約130時間に達し、過労死ラインといわれる80時間を大幅に越えていた。電通は労使協定で決められた残業時間を越えないよう、勤務時間を過少申告するよう指示していたとみられる。当初は女性社員の別れ話を利用し、個人の問題として片付けようとしていた電通であるが、女性社員個人のTwitterには過労だけでなく、上司によるパワーハラスメントやセクシャルハラスメントの被害を窺わせる書き込みもされていた。

上記Wikipediaより

 この事件により、社会が動いた。

 電通の新入社員であった高橋まつりさんが亡くなってから3年が経った。この事件は2016年に明るみになり、多くのメディアで過労自死事件として取り上げられ、世に衝撃を与えた。

 その後、東京労働局の過重労働撲滅特別対策班が電通に対して労働基準法に基づく臨検監督を実施するなど、事件の影響は労働行政にも広がり、これを機に過労死に対する対策が促進することが期待された。

https://news.yahoo.co.jp/expert/articles/bf64f120b0765d86f485ceaa46aae54f56ccf4c7

 もちろんまだまだ不十分だ。また悲劇が起きてしまった。

神戸市東灘区の「甲南医療センター」で勤務していた男性専攻医(旧後期研修医)が昨年5月に自殺し、西宮労働基準監督署(兵庫県)が、長時間労働で精神障害を発症したのが原因だとして、労災認定していたことがわかった。男性は医師になってから3年目で、自殺するまで約3か月間休日がなく、直前の時間外労働は、国の労災認定基準を大幅に超える月207時間に上っていたという。

上記記事

 読売新聞がスクープ的に報じ、報道が後追いしている。神戸大学出身の医師、神戸市内の甲南医療センター…。

 後輩にあたる若者の自死、知らないわけではない病院で起きた悲しい事件。

 実はこの病院に勤務する可能性がちょっとはあったので、またか、という思いも抱いた。

 この件に関しては、Xで内部告発をしているアカウントがあった。

 昨年こうした告発があった。このアカウントのツイートには、報道されていることがほぼ出ている。

 このニュースでX上は騒然となっている。

 医師の過労死は続いており、たとえば1999年に起こった小児科医の中原利郎先生の自死など、多々ある。

「働き方改革」医師の働き方を考える

 私が代表を務める全国医師連盟でも、さんざん働き方改革に関して強い口調で声明などを出してきた。

戦後、労基法が施行されてから現在に至るまで、医師の労働に関しては労基法の適応がおざなりで、監督官庁による監視は全く機能しなかった。労基法36条協定(サブロク協定)が未締結の状態での時間外労働、旧来の宿日直許可基準を満たせない時間外労働に対する賃金未払いなどが放置されてきた。労働基準監督官は、違法行為を常態化させている病院設置者・管理者を厳しく指導し、改善の意志が無い管理者を送検すべきである。

https://zennirenn.com/news/%e5%85%a8%e5%8c%bb%e9%80%a3%e5%a3%b0%e6%98%8e2022/

 それでも、医師は過重労働をしてなんぼ的な声が医学界では強く、なかなか改革が進んでいない印象だ。

 いったい何人死ねば世の中が動くのか。

 今回は大きな転機になる可能性があるかもしれない。

 上記で指摘されているように、今回の過労自死の代理人は、電通の事件でも代理人を務めた川人博弁護士だ。

 今回の件で流れが変わるかもしれない。

 人柱はもういらない。もう変えていこうよ。

 これを最後にしようよ。

 私たち全医連も、引き続き全力でこの問題に取り組んでいくことを宣言したい。

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