見出し画像

映画感想『M3GAN ミーガン』

公開から時間が経ってたので微妙な時間の上映ばかりでしたが、ちょうど観る機会ができたので行ってきました。一言でいうと、『アイの歌声を聴かせて』を苗床に誕生した『チャイルド・プレイ』と『ターミネーター』のキメラがこの映画です。

全体のプロットを整理すると、びっくりするほど古臭くて予定調和です。が、ロボットのミーガンが絶妙に怖かわいいデザインなのと、開発者のジェマとその姪ケイディの関係性が良くて、最後まで楽しく鑑賞できました。

AIがモチーフのフィクションだと、もはや胸焼けするほど擦られてきたロボット三原則が想起されますが、この作品にはそんなまどろっこしい概念は存在しません。アイザック・アシモフはクソして寝ろってことです。

ミーガンに存在するのは圧倒的な暴力の適性と超合金Zで造られてんのかってレベルの装甲、パートナーのケイディを守るためには手段を選ばない目的意識です。人間を傷つけることも人間の命令に背くことも、ミーガンの使命の前では些事に過ぎません。この作品最高クラスの武力とチャーミングさを持つミーガンは、恐怖と笑いの主な供給元です。

絶妙な人形感があるミーガンが、ケイディの安寧を脅かすものを千切っては投げ千切っては投げするのは独特の緊張感があり、クセになります。これが普通の人間みたいな姿かたちだったら、笑いのほうが勝ってしまうでしょう。お人形全開のご尊顔と、ぎこちなさの残る動き(突然流麗なアクションをするのもまた面白い)がうまく噛み合って、怖さと笑いがいい塩梅で押し寄せてきます。

結局のところ、AI発展著しい現代にあっては特に、この手のテーマは逆ご都合主義的にならざるを得ません。ロボットは人間に反旗を翻し、それを鎮圧することで一段落。ロボットと人間が共存するのはまだ早いのでした。チャンチャン。
『Detroit』のようなマルチエンディングゲームならいざ知らず、結末がひとつきりの映画ではどうしてもそんな展開になりがちです。『アイの歌声を聴かせて』はそのお仕着せ的なプロットを換骨奪胎していて好印象でした。

閑話休題。

本作もその例に漏れず、ストーリーライン自体はあまり特筆すべきところはありません。しかし、脚本はいい。
例を挙げると、マッチングアプリに登録はしているけどあまり結婚に前向きではない感のあるジェマの、ケイディに対する距離感というか、細かな心情が伝わるところなどです。セラピストの来訪予定を忘れていたり、玩具を買う時間はあったはずなのに、用意していなくて結局コレクションを開封してみたり。

突然9歳の女の子を預かることになった働き盛りの女性として、普通な反応と感情が見えるんですよね。それに対するミーガンの、どこまでも都合のいいコミュニケーションが対比として活きる。まあミーガンも最後に馬脚を現すというか、もう感情持ってんだろおまえという捨て台詞を吐くわけですが。

やはり最終的に評価すると、途中まではホラーと見なしてもいいけどラスト付近はどう考えてもターミネーター。SF的な評価は0点、ミーガンのキャラは80点、ロボット相撲は100点です。
あと余談ですが、ペッツの顔面がヤバすぎていちばん怖かったです。歯を生やすな歯を。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?