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妻の姓になって考えたこと

4% ─夫婦の姓に関する現状─

平成27年度の調査によると、96%の夫婦が夫の姓を選択して結婚しています。僕たちは2020年1月に婚姻届を提出し夫婦となり、僕は戸籍上の姓が変わりました。仕事では旧姓を使っていますが、名前が2つある感覚は意外に楽しいです。結婚以来、この4%のマイノリティーの立場として何か発信できないかという思いが常に頭の片隅にありました。

現在の日本の法制度では、結婚にあたりどちらか一つの姓を夫婦の姓として選ばなければなりません。手続きは非常に簡単で、どちらの姓にするとしても、婚姻届の「婚姻後の夫婦の氏」欄の「夫の氏/妻の氏」のどちらかにチェックマークを書くだけです。妻の姓になった男性が「婿養子になったの?」と聞かれることがよくありますが、妻の姓を選ぶことと養子縁組をすることは全く別の手続きです。結婚すると同じ姓となった二人の新しい戸籍が作られるので、(根付いている価値観・感覚は別として、)制度上はどちらかがどちらかの家に入る、といったことは本来はありません。

気づく、話す

夫婦の姓に関して最も問題なのは96%や4%というその数字自体ではなく、結婚する夫婦が十分なコミュニケーションをとらないまま、「そういうものだから」という理由でどちらかの姓を選択した結果、夫婦のどちらかが不利益を被る可能性があるということです。夫の姓を選んだ96%の夫婦だけの問題ということでは決してなく、妻の姓を選んだ4%の夫婦の中でも、「そういうものだから」という理由で妻の姓となったケースも多くあるのではと想像できます。僕自身も、結婚しても自分の姓は変わらないんだろうと何の根拠もなく思い込んで育ってきました。この悪気のない思い込みが、時に相手の心を深く傷つけてしまうのです。
これが普通だから、今までこうしてきたからという無意識のバイアスがあることに気づき、自分たちはどうしようかと話し合うことが最も大切であり、難しいことだと思います。夫婦で話し合った結果、これまでのやり方を踏襲するのが大切だよねという結論になれば、それは認められて当然です。
苗字というものは、アイデンティティや仕事の仕方に大きく関わる、まさに自分という人間の一部であると言えます。その大切なものの陰に潜む問題を見過ごさない社会や夫婦の在り方であってほしいと願います。

認め合う

夫婦間のコミュニケーションを促す必要がある一方で、やはり結婚は両家にとっての一大イベントであり、現状では「普通でない」選択について両親や祖父母の世代にどのようにして理解を得るかという課題も避けられません。「理解を得る」というよりは、互いの価値観を「認め合う」ことが望ましいですが、この部分はまだ頭の中で考え方の整理ができていません。実際自分の行動を振り返った時の反省点でもあります。
確実に言えるのは、上の世代の方たちの価値観は決して否定すべきものではないし、自分たちの世代の価値観も今後アップデートされ続けていくものだということです。絶対解が存在しない中での話し合いだからこそ、「認め合う」という基本中の基本のスタンスを忘れてはならないと思います。

おわりに

最近、選択的夫婦別姓等の議論では、故意に強い言葉を使って賛成派・反対派の対立を煽っているような雰囲気が少なからずあると思います。早期の問題解決のためにも、冷静で着実な話し合いが進んでほしいと思うばかりです。(もうひとつ関係のない愚痴を言うと、各種本人確認書類への旧姓併記の手続きが煩雑すぎて、放置し続けて1年以上経ってしまいました…これは僕が悪いのですが、このようなハードルをひとつひとつ下げることも多様性を認める上で大切ではないのかな…)
最後になりますが、この記事を読んで夫婦の姓について少しでも自分事として考えるきっかけとなれば嬉しいです。

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これからもがんばります。