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この本が在れば、通りすがりの誰かとフェミニズムの話をするのが怖くないかも。

NOTEの更新頻度として、2〜3日に一回くらいを目指せたらなと思います。自分はやっぱり読むことと、文を書くことを丁寧にやってみたい。

どこで宣伝したわけでもないのに既にいくつか「いいね」を頂いていて驚きました。見つけてくださってありがとうございます。今後ともどうぞよしなに。

さて2冊目の投稿です。今回読んだのは「別冊NHK100分de名著 フェミニズム」(加藤陽子/鴻巣友季子/上間陽子/上野千鶴子著,NHK出版)です。

三軒茶屋の推し本屋「twililight」さんへ友人と共に訪れた日、特に本をお迎えするつもりはなかったし、なんならNHKさんへ良い感情はさほど抱いていなかったのですが、本棚へ差されたこの本を見た瞬間に欲しくなっちゃって購入しました。

「女であることの生きづらさ、性暴力、これらと対峙してきたフェミニズムに正面から取り組みたいと思いました」。はじめに、の中で語られる「100分deフェミニズム」ディレクターの山田あかねさんの言葉です。

思えば、「フェミニズムに関心があるんだ」というたった一言、この一言を言うか、言うまいか、逡巡することが日常の中で何度もありました。

SNSの中で発言することには何ら抵抗がないのに、どうして現実世界で、既知の人間たちへ言うことはこんなに難しく感じられるんだろうと、何度思ったことか。「それ」を言うためにはまず、全部自分の言葉で、「それ」を支持する理由を0から100まで綺麗に、整理して、かつ簡潔に述べなければならないような、根拠のない緊迫感を常に感じていました。

反駁されて、返す言葉を持っていない自分を知るのが怖かったのかもしれません。
言葉に詰まる姿を見せて、「ほらね、やっぱりフェミニズムって碌でもないじゃん、意味ないじゃん、良くないじゃん」そんな言葉を返されるかもと、想像しただけで怖かったせいかもしれません。(実際はそんな良い/悪いの二元論で語れることではないとわかっていても、その次元で開かれる話ではないとわかっていても。)

ある程度コンセンサスの形成された(フェイニズムに関心がある、似たような主張をもっていることを知っている、既にSNSの中でそんな会話をしたことがある)間柄では、そんな杞憂一切抱かずに、心ゆくまで、想いを語れるのに。

そう思っている事に気がついて、ああ、そんな制限をかけないようにしないと、とふっと気付かされました。「女であるために、生きづらかったことがあった。だからそれを後世まで残さない為に、こうしてフェミニズムに関心を持って生きている。」それ以上に一体どんな言葉が必要だったのだろうか。またひとつ、解放された。

本書は大まかに4章に分かれていて、先に述べた4人の著者が各章の中でテーマと深く関わる書籍をそれぞれ選書して、その本の内容と絡めながら各人の「フェミニズム」を説く。本を通して初めて知った事柄や得られた知見も多く、なかなか学びの多い一冊だった。(自分はタイトルで「フェミニズム」と冠された書籍を忌避するきらいがあったのだけれど、この理由についてはまた機会を改めて、そのうち解きほぐせれば良いなと思っている。)

中でも一番印象的だったのは2章「女性を分断するディストピア」のなかで語られた「2種類の自由」という知見。いわく「freedom from~(〜からの自由・解放)」と「freedom to~(〜への自由・実現)」なるもので(この引用元である『侍女の物語』の中ではそれぞれ「したいことをする自由」と「されたくないことをされない自由」と邦訳されているということを知り、ふか〜〜〜くため息をついた。プロの文芸翻訳者さまってやっぱり素晴らしい…)、この二つをくれぐれも混同しないようにしなければならない、という筋書きだった。

セックス・妊娠・出産・代理出産・セックスワークの問題における「自由意思」を捉えるとき、頭が痛くなってしまうことが多かった。それほど問題構造が複雑だからなのか、あるいは…と肩を落としがちだったけれど、ここを押さえたおかげで本質を(少しは)垣間見れたような気がする。

自分の場合は、パッと思い浮かぶのはトー横キッズたちや、不機能家庭出身の人間たちの「自由意思」。多分それは自らが経験して、常に密接していて、切り離すことができない問題だからなのではないだろうか、と考える。わからない。ここから先を考えようとするといつも頭に靄がかかる。今日もここで一度思考を止めることとする。(そんな調子なので、実は3章はしっかり読めなかった。また今度。)

ただ今日も、こんなふうに本を読んで、少しだけまた明瞭になった解像度をもって、立ちはだかる世間の難しさを自分の言葉として紡きなおす営みを続けていくことができれば。

この本、装丁がグレーに黄色で、(ちょっとばかしお上品すぎるけれど)なんだか持っていて心地がよかった。

23.09.30

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