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後悔してもしきれない事。失敗。 / ④


師匠に正式にアシスタントになってから、2、3ヶ月ほど経った頃

シーズンごとに撮影のある、通販カタログのスケジュールが入っていた。

これは本当にハードスケジュールで、約5日ほど、早朝から夜までぶっ通しで、ロケ撮影とスタジオ撮影をこなしていく という仕事だ。

師匠も姉弟子も、またこのシーズンが来たと言ってお決まりごとのような感じで言っていたけど、私からすると恐怖のスケジュールだ。(内容が濃いので、姉弟子もヘルプできてくれていた)

まず、朝は始発に乗って目黒駅近くのナチュラルローソンの前で師匠と集合する。

その後、そのカタログの編集社に行きモデル3人を仕上げる。

いつものように師匠はメイク、私たちはヘアやネイルを。

とにかく時間がないので、すべてスピード命、

すぐにロケに出発できるように、その時に師匠が使ったメイク道具やスタイリング剤をアシスタントバックに詰め込んで(3人分)その他イメージごとにリップの色なんかを変えていくので、リップのセットも詰め込む。(あとで突然あの色持ってきてないの??とか言われた日には師匠の逆鱗に触れるので。。)

そしてダッシュで片付けをして、ロケバスに乗って出発。。。

怒涛の朝の時間が終わった後は、都内や、千葉、神奈川などその時その時で、色々なロケ場所に向かう。

その移動の間も、渡された香盤を見ながら、次はどこで誰が何カットあるのかなどを頭に叩き込んで、師匠に何か聞かれた時にはすぐに答えられるようにしておく。(この撮影以外でも、常にそれもアシスタントの仕事のうちなのだけど)とにかく洋服の着数も、カット数も膨大で、これを1日で取りきるのかと思うと、ゾッとするような香盤表なのだ。


モデルさんはもちろんいつも雑誌なんかで見る本当にその頃、みんなが知っているような人たちばかりで、モデルさんもハードだし、数日続くので、少し話したりできるのが、ほんの少しの楽しみだった。

ロケ先では、師匠の横について、チークやリップと言われたら、どのモデルさんがどれを使ったか間違えないように渡さないとそれも怒られる。

アシスタントバッグの中はいろんなメイク道具にあふれていて、なかなか言われたものを探せない時も、早く早くと急かされ、それだけで、師匠との間にピリついた空気が流れる。


そして夕方ごろ、日が落ちてからはスタジオでの撮影。

そこで一番集中力が切れがちなので、姉弟子になんども気をつけてと言われている。

スタジオについたらいつものごとく師匠の荷物をすべてメイクルームに入れ、セッティング、すぐにモデルさんのメイク直しや髪の巻き直しを始める。


本当にちょっとも気が休まる瞬間は無く、次々にやることが出てくる。

スタジオでの撮影はそんなに深い時間までにはならない予定にはなっているけど、ロケが押せばその分ずれ込む。

そしてまた次の日も始発の電車に乗り、ナチュラルローソン前に集合して、、、と、こんな感じで4日か5日続く。


多分私がアシスタントについてから2回目をむかえたその通販カタログの撮影の時だったと思う。

朝、目が覚めて


一瞬、

今日はなんだっけ?

集合何時??

今何時??


何度か携帯の時間を見直した。

集合時間の10分ほど前だった。。

なんで??なんで??

目覚ましかけていたはずなのに、なぜかふと目が覚めたのがその時間だった。。

もう身体中がこわばり、震えていて、頭が真っ白

ものすごい恐怖に襲われる。


師匠にアシスタントにつく時にクビになる条件を言われていた。

それが


「遅刻」だ。


私は今すぐに師匠に連絡しなければということと

クビの事が頭の中でよぎり、

電話する恐怖で震えていた。

でもとりあえず電話しないととおもい、

電話した。


私は今の状況と、これから向かえば何分で編集社に行ける

ということを多分話したと思う。

師匠は、口少なく「は?」とぐらい言って

「今日は来なくていい。」

と言って電話は切れた。


やってしまった。。。


今まで、働いてきて、美容室でバイトしていた時も、ウェディングの仕事をしていた時もどんなに寝れていなくても遅刻だけはしたことなかったのに、、

こんなに完全なる遅刻は初めてだった。。

朝の5時半

私は4.5畳の小さなアパートの真ん中で、

呆然とした。


その後すぐに姉弟子に電話して、どうしたらいいか聞いた。

今すぐ行くことはできるし、行った方がいいのではないかと言ったけれど、

姉弟子も同じように、

「師匠が来なくていいと言ったなら、来なくていい。」と言われた。

「後で来られても顔見ただけで多分師匠はイラつくし、顔も見たくないと思うから。」と言われた。

本当にそうだ。


渡されていた香盤表を見ながら、

今メイク始まった頃だな、とか姉弟子がやる事が増えて、大変な思いをしているな。とか。

私がいなくても多分師匠は時間には絶対仕上げるし、私がいてもいなくても一緒かもしれない。

今回も姉弟子もヘルプにきてくれているし、撮影に大きな影響が及ぶわけではない。

そんなことを考えながら、数時間ぼーっと時間が過ぎた。

そしてまたじわじわと恐怖が湧いてくる。

せっかく決まった師匠だけどこれで終わりだ。

クビだ。


頭が真っ白になるって言うのはああいう状態の事をいうんだなって

後からわかった。


どうしていいかわからず、とりあえず、その日の撮影が終わるのを待った。

姉弟子に、撮影が終わったかをメールで聞いて、

終わったのを確認して、師匠に電話をかけようと思っていた。


でも、、怖くてかけられない。

でも、かけなければいけない。


電話が繋がり、

「わかってるよな??」

と、言われ、

わかってはいるけど、やめたくない。と謝った。

とにかく謝って、やめたくはない事を言ったけれど、師匠からはいい返事はもらえなかった。


そしてその日は、あのもう1人のアシスタントの男子が来て、現場は大丈夫だったことも知らされた。

初めて抱くような屈辱感と、自分への不甲斐なさ、朝の出来事が何度も何度も頭の中で繰り返され、自分に苛立ち、心臓がとてつもなく痛かった。


後悔しても仕切れないおもいで数日が過ぎた。



続きはまた










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