えんむすび喫茶館 第11楽章


糸の頭の中は実の事でいっぱい
恋の病にかかってしまい重症な糸



寝ても覚めても実さん、実さん
どうしましょうこの気持ち、



女学校の帰りにずっと考える、
女学校の友達の久子と菊には
なかなか言えない。



雅子に相談したい
でも自分でどうにかしたい。



そうだ、私



何を思ったのか知らず知らずに
足が自然の引力に導かれ
実のアトリエの方向に向かって行った。



私は偶然なんて嫌、
会いたいから逢いに行くのよ



糸は本当に実に出会い
何もない世界に牡丹の花が
世界中に咲いたように



ただ会いたい



一目会いたい



実のアトリエに着いた。



糸は思い切って実のアトリエのドアを
ノックした。もう止められなかった。



「はい」実がドアを開けた。



「実さん•••会いたくなってしまって
ごめんなさい•••」糸は気まずそうに、
足が震えながら勇気を振り絞った。



実は何も言わなかったが



「糸さん、帰りなさい。
朝友さんとは仕事の付き合いだ。朝友さんとの信頼関係を壊したくない。この前アトリエに入れただろう、ここは俺だけの創造の為の大事な空間だ。」


「嫌です!帰りません!」
糸の意思、実への想いは強く
帰れと言われてもめげなかった。
実を見つめる情熱的な眼差し、


実は狼狽た。こんな意志の強い若い十代の少女は初めて出会った。実もまた恋愛の感情ではないが初めて心打たれる感情を味わった。

「糸さん」

「は、はい」
糸はハッと我に返る。

「ごめんなさい、実さん、
お忙しいのに」


会うのは今依頼されている絵が幾つかあって

とても大事な作品なんだ

仕上がるまで待ってくれないか


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