蚊が壁にぶつからない仕組みがドローンに応用できるかも

自然界がテクノロジーのお手本になる例はたくさんありますが、これもその一つになりそうです。アブストラクトによれば、蚊が暗闇でも壁にぶつからないのは、自身の羽ばたきで生じる気流の変化を機敏に感じ取っているからで、これを応用すると小型で低消費電力で安価な壁検出センサーができるということです。

拙訳

蚊は昆虫界におけるフクロウだ。真っ暗な中でも壁にぶつからずに飛ぶことができる。今回、この忌々しい虫がどのようにこれを成し遂げているのかを研究者が解明し、その仕組みを応用してセンサーを構築した。このセンサーは、いつの日かヘリコプターの安全な飛行に貢献することだろう。

研究チームは、一部の昆虫がもつある器官に注目した:触覚の根本にある、円形状に並んだ12000個もの細胞だ。まるで逆さまの傘のようであるが、これが触覚の揺れを検知するのである。研究者達は、ジカウィルスや西ナイルウィルスを媒介する蚊の一種であるネッタイイエカが、床や壁から様々な距離で飛んでいる様子を撮影した。撮影した何千枚もの写真から、蚊の長く細い羽からどのように空気の流れが生じるか、またその流れが蚊が壁面に近づくに連れどのように変化するのかを可視化することができた(冒頭の動画のように)。

この流れをコンピュータシミュレーションにより計算した結果、羽は下降する気流を生み出しており、この気流は蚊が壁面に近いほど乱れていくことがわかった。気流が戻ってくると、触覚周りの空気の流れが劇的に変化し、これにより壁に衝突しそうになっていることに蚊が気づくことができる、と研究チームはScienceで報告している。

そして研究チームは手のひらサイズのドローンに同様のセンサーと、このセンサーが壁を検出したら光るライトを搭載した。この「ヘリ蚊プター」は暗闇でも壁を検出することができる。

このセンサーがいかに高効率で軽量(たったの9.2グラム)であるかを考えると、ドローンなどの飛行体で荷物を配達したり、橋の検査をすることがもっと効率よくできるようになるだろうーーそれも暗闇の中で。また、本物のヘリコプターにおいてもこのセンサーが使えない理由はない、と研究チームは付け加えている。

所感

自動運転車にしても自律飛行ドローンにしても、センサーがとても重要なわけですが、性能の良いセンサーは価格が高い、ものがデカい、消費電力も大きい・・・という状況でなかなか実用化(市販化)が難しい面があるようです。こういった、(用途は限られるけど)安価なセンサーも併用して、安心・安全の技術がより身近になっていくといいですね。

季節も夏めいてきて、今年もそろそろこの不快な虫との闘いが始まろうとしていますが、このような研究成果に貢献していると考えれば、少しは寛容に・・・なれません。やはり蚊には滅んでいただきたい(過激)。