見出し画像

インクルーシブな日本語教育

3月14日に参加した外国語授業実践フォーラムは「インクルーシブな社会のために言語教育はなにができるか」がテーマでした。
フォーラムの中で東京学芸大学の南浦涼介先生の話が私にとってタイムリーだったのでメモをしておきます。
(私の解釈なので間違えていたらごめんなさい)

インクルーシブ教育をめぐる論点


外国人児童生徒に対しては2014年度特別の教育課程が制度化されたり、アセスメントDLAが開発されたりなど日本語能力に配慮する仕組みが導入されつつあります。
その一方で、南浦先生は4つの論点で課題を提起されていました。
1.方法の目的化
授業のユニバーサルデザイン(UD)化を進めるにあたり「わかる」「できる」方法に焦点があてられがち
2.方法の標準化
教育行政や学校の中で一定のレベルを確保するため教育方法が標準化される
→うまくいかないと子どもの排除に拍車がかかる
3.合理的配慮のみへのフォーカス
本来内容とUDは一体であるが、合理的配慮のみが言及されがち
4.個人の問題にされがち
問題を弱者側におしこめ周辺化されがち
上記を「指導の個別化」とされていました。

背景には、学校には学習指導要領があるので内容や目標が決まっているという語り方になりやすい、若手教員の増加による教育のスタンダード化、学校現場を巡る世間の目などがある、
学校と教員をめぐるカリキュラムと期待のダブルバインドが存在している、など指摘されていました。

「指導の個別化」を解体するには


本来、学びは子どもたち自身が獲得するよう場面を仕組まなければならないですよね。
南浦先生は、「学習の個性化」の視点を主張されていました。
すなわち、学習の目的は他者との差を解消するのではなく、個性や特質を伸ばす方向に向けられる、環境づくりには方法に着目するのではなく、内容(テーマ)や目的に着目し、質的・多面的に展開する、という視点です。

南浦先生は、実践例として、外部NPOと連携したした授業づくり紹介されていました。外側にある共同体(実践例ではNPO)へ教室を開くことで、外側の共同体からフィードバックあるいはエンパワメントをうけることができるのです。

お話を伺って考えたこと3つ


考えたことは3つあります。
1つ目は、「学習の個性化」の視点は、どの子にも必要だということ。
外国につながる子どもに関わるようになって、子どもの課題は「言語の問題」なんだろうか、とよく思います。
例えば、学習でつまづく子どもの、そのつまづきは単なる言語の問題ではないのではないか。
ヘンな例ですが、我が家の三兄弟は日本語母語話者ですが、勉強のデキはそれぞれだったし、伸びた時期もバラバラだった。
学びは言語とは別のところでもつまづいたりうまくいったりする。
大切なのはその子どもの個性(ことばも含め)であり、子どもを多面的に捉える必要があるということです。
外国につながる子どもたちは、問題を言語に集約されがちだから「指導の個別化」が起こりやすい、というご指摘に共感しました。子どもたちそれぞれの個性を見る目を養っていかなければと思います。

2つ目は、外側にある共同体を活用したいということです。
行政職だった10年ほど前、子どもと芸術を結ぶ仕事に関わっていました。アーティストとの活動が教室に好影響を与えるというのを思い出しました。
このことは言語文化教育研究学会(ALCE)の年次大会に参加した際もあっそうだ、と思いましたが、前職の経験がこれからの活動につなげられるかもしれないと気が付きました。小学校での新生活に馴れて、許される状況が来れば、外側にある共同体との活動を自分の教室活動で取り入れたいと考えました。

3つ目は、日本語教育の専門性を外側にある共同体として持ち続けるということです。
2020年度に参加した「子どものための日本語教育研修」に参加した際、他の受講生の方が「私は学校を外側からサポートする」という立場を示されていて、とても印象的でした。
そして、日本語教育から学校教育に入ろうとしている私は、これからどういった立ち位置でいたらいいのだろうかと考えました。
小学校教員になるからには、まずは学校へ順応を目指します。しかし「完全な順応」(←何といえばいいのか…)ではなくて、やはり日本語教育の方に片足を突っ込みながらの関わりができたらと考えました。
なんというか、学校にどっぷり浸かってしまうと、学校教育で言われている当たり前が自分のあたりまえになってしまい、日本語教育の視点(外部の視点)から見えなくなるかも→私の役割として、外部の視点を保ちながら内部でやっていけたらと考えました。しかしこれは言うは易し行うは難しですね。。。修行あるのみ。そして人生はつづく・・・


ご希望の方に論文の練習相手をします。あなたが作成した文章にコメントを付けてお返しします。画面最下部にある「クリエイターへのお問い合せ」からご連絡ください。