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「貿易ゲーム」から「新・貿易ゲーム」へ

 英国で「貿易ゲーム」が生まれてから20年以上経つと、世界の貿易もずいぶん様相が変わってきました。中国、タイ、マレーシアのような、かつての「途上国」が加工貿易でお金を稼ぎ、日本の企業は海外へ工場を移転させて国内の経済が空洞化し・・・。
 20世紀が終わりに近づく頃、ぼくらは「貿易ゲーム」の“古さ”を感じ始めていました。

 そんなとき、Christian Aid が「貿易ゲーム」の発展版である『MARKET TRADING』というワークショップ教材を出していることを知ったのです。
 紙を切って製品を作り、それを売ってお金を稼ぐところは「貿易ゲーム」と同じですが、大きく違うのは、複数の「運送会社」が存在し、「マーケット」の注文を聞いて生産国から製品を買い付けて儲けるというところです。

 そこで、2000年3月、「新しい『貿易ゲーム』を考える宿泊セミナー」(主催:開発教育協議会)というのをやることになりました。参加者の多くは、ファシリテーターとして何度も「貿易ゲーム」をやってきた人たちでした。
 そのセミナーで初めて『MARKET TRADING』をやってみたところ、たしかに面白いのですが、なにしろ複雑なので、ゲームだけで2時間もかかってしまい、日本の教育現場でこれを使うのは非現実的だろうと思われました。
 そこで、いろいろ考えた結果、新しい「貿易ゲーム」を作るなら、「基本編」と「応用編」に分け、それをうまく組み合わせて使えるようにするというアイデアが生まれました。

 そして、総勢10名のプロジェクト・チームが立ち上がり、それから1年間、みんなでアイデアを持ち寄って、新しい「貿易ゲーム」のいろいろなバリエーションを作っていきました。学校の先生をしているメンバーは、それぞれの学校で子ども達を相手に「試作版」を使ってワークショップをやってみて、その結果を報告してくれました。

 そのようにして、2001年夏に完成したのが『新・貿易ゲーム』です。
 従来の「貿易ゲーム」を基本にしながら、『MARKET TRADING』の良いところを取り入れ、国際経済の実情に合わせて手を加えた「基本編」と、とくに重要な課題に焦点を当てて学ぶための「応用編」からできています。応用編のバリエーションは、「国づくり」「IT革命/デジタル・デバイド」「企業の海外進出/国内経済の空洞化」「産業廃棄物」「国際機関」「累積債務」「フェア・トレード」の7つになりました。
 たとえば、「国づくり」は、お金を稼ぐだけでなく、稼いだお金を使って自分たちの国のインフラを整備するというもので、経済格差が生活格差として目に見える形で表れるので、小学生にも分かりやすいバージョンです。

 『新・貿易ゲーム』ができてからもう20年以上経ちましたが、開発教育協会の「教材コーナー」では、いまもベストセラーの上位に入っています。

開発教育協会『新・貿易ゲーム』 ※教材の詳しい紹介が出ています。
https://www.dear.or.jp/books/book01/1149/


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