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【世界のプラントベースフード事情】 #1 タイ編

こんにちは、ひよこ部部長の原島です。ソイミートを中心としたプラントベースフードってビヨンドミートとかインポッシブルとかアメリカ発で、最近そのブームが日本にも押し寄せてきたイメージですけど、果たして他国はどうなんだろう?と、ふと疑問が。日本だけでなく各国でブームになっているのか、世界のプラントベースフード事情を調べてみるのも面白そうですよね。
とはいえネットでの調べものにも限界があるし、新型コロナで現地現物確認も難しいご時世。実はわたしは30代中盤から後半まで一番働き盛りの時期にタイに住んでいました。なので、タイにいる友人にも現地調査を手伝ってもらって、世界のプラントベースフード事情第一弾、タイ編調べてみました!

タイには元々菜食の文化や習慣がある

タイでお祭りといえば、私たち日本人にとってはタイ正月にあたる4月の「ソンクラン」が有名でしょうか。いわゆる水掛け祭りってやつですね。
では、「ギンジェー」はご存知でしょうか。毎年旧暦の9月に9日間開催される菜食週間というのがあります。この期間は、卵含め動物性の食材を避け、野菜や果物だけを食べます。また、ニンニクやネギなどの香りの強い野菜も避けます。
主に中華系タイ人が中心となり続けてきた伝統行事で、心身を清め浄化することを目的としています。今年2021年は10月6日~14日のようです。
街中では黄色バックに「齋」「เจ」の赤文字があふれ、屋台だけでなくスーパーやコンビニでもギンジェー用の装飾と菜食の期間限定メニューが並びます。

1ギンジェー

わたしがタイにいた2016年には、セブンイレブンでもギンジェー期間限定でエリンギの照り焼きおにぎりが販売されていました。(パッケージ右下の「เจ」の文字がギンジェーであることを表しています。)

2エリンギおにぎり

このギンジェー、ここ数年は若い人たちの健康的なライフスタイルを目指すトレンドにも乗り、より規模が大きくなっているようです。読売新聞の大手小町のコラムで分かりやすく説明されています。
また、私がいた頃のギンジェーでは豆腐や厚揚げをそのまま肉の代わりに焼いたり炒めたりしていましたが、最近はソイミートを使うことも多いようで、タイでも流行ってきているようです。ここからはバンコク在住の友人が最新現地事情を調べて教えてくれました。

カフェやファストフード、あの家具量販店でも!

3スタババーキンイケア

スターバックスはタイ全土に400店舗以上展開していますが、バンコク市内の店舗にビヨンドミートを使ったその名も「ビヨンドミートサンドイッチ」が販売されていたそう。価格は165バーツ(約560円)。スタバはコーヒーも日本とほぼ同価格なので、現地の水準からするとだいぶ高額に感じます。
続いて、バーガーキング。こちらは今年の3月からプラントベースワッパーを販売開始したようです。単品165バーツ(約560円)、セットで219バーツ(約740円)。日本のプラントベースワッパーはこの前食べたけど、日泰の食べ比べとかも面白そう。
マクドナルドやKFCなど、他のファストフードはまだソイミート取り扱ってないようでしたが、ここ最近、タイのKFCでも販売開始との日経の記事もありました。CPフーズ(CPF)については下でより詳しく。
そして、タイにも3店舗展開しているIKEA。うち2店舗にはレストラン併設しており、プラントボールを使ったメニューもあるようです。新型コロナでずっとクローズしていたようですが、9月から営業再開。今度味見してきて、とお願いしてあります。

続いてスーパーやコンビニ編、大企業も参入!

スーパーやコンビニにも行って調べてきてもらいました。タイでスーパーは一般庶民向けのBig CやLotus、モールに入っているちょっと高級路線のGourmet MarketやCentral Food Hall、外国人向けのVilla Market、などチェーンごとに客層ターゲットは異なるものの大概どこでも販売しているようです。一方で日本人向けのフジスーパーにはなかった模様。日本よりもプラントベースが浸透しているのかもしれません。
コンビニでは、セブンイレブンでは売っていて、ファミマ、ローソンでは販売していませんでした。
以下にまとめています。価格ですが、タイは鶏肉が激安だし、豚や牛に比べても割高感はありますね。
この中で要注目なのはThai UnionCPF。これらの巨大企業も参入しているというのは大きな驚きでした。

4スーパー

※バンコク市内スーパーでの食肉の価格

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タイの食品大手の参入は持続可能性も意識

Thai UnionCPFは日本ではあまり馴染みがないかもしれませんが、世界的に見ても畜水産業の超大手で、エリート層のタイ人学生も就職を希望するような超優良企業。
Thai Unionはツナ缶の世界最大手で、2020年の売上高は42億USドル(約4,600億円)。日本でツナ缶といえばシーチキンのはごろもフーズでしょうか。はごろもフーズの直近の売上高が825億円なので、その規模が分かるでしょうか。
一方、CPFは、タイの最大財閥CP(チャロン・ポカパン)グループの中核を担う食肉最大手で、2020年売上高はなんと189億USドル(約2兆700億円)。日本で同業だと日本ハムがトップですが、その売上は約1兆2,000億円。倍近くの売上を誇る企業です。ちなみに、タイ全土に約1万2,000店あるセブンイレブンは同じCPグループで、ここで自社製品を販売できるのは大きな強みです。
そんな彼らがプラントベースミートに参入しているのは、投資家からのESG(環境・社会・企業統治)評価を十分意識しているからと思われます。
実際、イギリスのFAIRRイニシアティブという投資家団体が世界の畜水産大手60社を対象にした持続可能性格付け評価で、CPFがアジア最高位12位、Thai Unionが14位に位置付けられ(それでも中リスク評価)、日本でリストアップされている日本水産、マルハニチロ、プリマハムはいずれも両社より下位で高リスク評価とされています。CPFThai Unionも売上の7割以上を海外市場で稼ぐグローバル企業、世界のESG投資の動向にも敏感なのだと思います。

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最後に

タイでは、元々ギンジェーのような菜食のイベントがあったところに、消費者の健康意識の高まりと共に、街中でも通年でプラントベース製品が販売され始めています。また、提供する企業側はESGや持続可能性、将来の食糧危機を意識した製品開発や提供をしていることが分かりました。
さらには、消費者側にも健康だけでなく、企業のESG活動を考慮したブランドや商品選択の意識も出てきているようです。タイを含めた東南アジア全体での調査とはなりますが、実に95%の人々がESGに配慮した商品に多くお金を払う、さらに80%の消費者は10%余分に払ってもよい、というコンサルティング会社ベインアンドカンパニーの調査結果がありました。

7ベインアンドカンパニー

投資家による格付けやこういった調査結果を見る限り、企業も消費者もESGに対する認識は日本より浸透していそうな気がしますし、健康ブームも相まってプラントベースフード市場はさらに拡大していくのではないでしょうか。企業・消費者、どちらも一体となった良い循環が生まれているように感じます。

あとは実際に現地に行って人々へのインタビューだとか実商品を手に取って食べてみて、日本との違いやタイのブームの状況を感じてみたいですね。まだまだ自由に渡航できる状況ではないですが、新型コロナが終息して再び自由に渡航できる日が戻ってくることを祈るばかりです。


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