青空と山

真摯に「投資」と向き合う時代 #熱狂書評

投資漫画「インベスターZ」の熱狂書評について想いを巡らせていると、
「漫画の書評か。いやいや、それどころじゃない。個人や小さな組織が行う投資も大事だが、我々の生活を支える『公共投資』について語る方がよいのではないか」という気持ちがふつふつと湧いてきた。

それはもちろん、九州・四国・中国地方を襲った「平成30年7月豪雨」による被害を目の当たりにしたからだ。

平成最後の年に平成最悪の災害が起こってしまった。

たかが雨、されど雨である。

7/11現在で160名を超える方が犠牲となり、60名以上の方がいまだ行方不明だ。
字面を見るだけでも辛いし、映像が流れてくると目をそむけてしまう。自然の猛威を目の当たりにすると如何ともしがたい気持ちになる。
(僕はCAMPFIREの災害見舞金プロジェクトから少ないながらも寄付をした)

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インフラの重要性に気付く

我々が人並みの生活を送るにはインフラが必須だ。水道、ガス、電気、道路がない生活など考えられない。

インフラを支える税金を扱うのは自治体であり政府だ。
学生時代にはなんの面白味も感じなかった政治経済だが、社会人になってみると途端に面白く感じられるようになってきた。
学生から社会人になり、社会に向ける視野が広がって、身近になってきたからだろう。
インターネットで得られる聞きかじりの知識ではあるが、ないに越したことはない。

政治経済について、ここ10年ほど参考にさせてもらっているのが三橋貴明氏だ。
ブログ「新世紀のビッグブラザーへ」では経済指標の丁寧な分析・解説に加えてストーリー仕立てで政治経済の問題を提起されていて、毎日読むのが日課になっている。
ブログを毎日更新されており、なんと10年以上も続いている。ただのブログ超人である。
三橋氏が懇意にしている方も知識人ばかりで、「三橋界隈」のウォッチもなかなか乙である。

その三橋氏が一貫して主張しているのが「積極財政の必要性」だ。
国・政府は必要な分野にきちんと予算をつけて政をしろ、という主張である。

高度経済成長期に全国に建設された道路やトンネル、橋などのインフラが更新期を迎え老朽化しているにもかかわらず、更新する費用つまり公共投資が足りていないのだ。

(2010年の記事)8年も前から今の災害多発時代を予測していたような言説。「天災に備えておけ」という警告である。

公共事業(こうきょうじぎょう)とは、中央政府や地方公共団体が、市場によっては適切な量の供給が望みにくい財・サービスを提供する事業のこと。公共投資(こうきょうとうし、英: Public Investment)ともいう。

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(引用)30年前より少ない日本の公共投資
http://business.nikkeibp.co.jp/article/money/20100827/216005/?P=2

日本における公共投資(=公共事業)は1997年を境に激減し、最大だったときの半分にまで削られている。その頃からマスコミが「公共投資=悪」というプロバガンダを行っていた。

インフラが必要になることが分かり切っているのに、インフラ整備費を増やそうとしていない。(なぜ増やせないのかは「プライマリーバランスの黒字化」でググってみてください)


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なぜ公共投資が必要なのか

なぜ公共投資が必要になるのか。
それは高度経済成長期に建設されたさまざまなインフラが寿命期を迎えるためである。営利目的の企業がインフラ整備を担っていては、対象範囲が広大すぎて、すぐに倒産してしまうだろう。

みなさんがお住まいの家でも、フローリングの床が剥がれた、水道管からの水漏れ、エアコンの調子が悪い、そんな状況にあるならば修理をするはずだ。だれでも快適な生活を維持したい。
しかしながら公共投資が20年もの間削りに削られた結果、インフラを十分に修理・整備するための財が足りていない。インフラを整備できる肝心要の土木業者が激減してしまっていることも一つの要因だ。

-道路が陥没した。
-川にかかる橋の橋げたにヒビが入っている。
-トンネルの壁にヒビが入った。
-水道管が破裂した。
あなたは修復方法を知っているだろうか?

修復を行おうとするも
-どこから資材を調達するのか
-誰が運搬するのか
-重機はどこから借りられるのか
-工事にあたって役所へ届け出が必要か
-工事が完了した後のメンテナンスはどのように行うのか
など、さまざまなノウハウが必要になる。
それらノウハウを握っていたのは、インフラを整備していた土着の土木業者だ。

しかしながら売り上げがなければ企業は存続できない。
その売り上げの原資が公共投資である。
つまり公共投資が途絶えると、業者が減り、ノウハウは消失し、インフラが直せなくなり、インフラが崩壊していく。
維持するよりも消失してしまったものを取り戻すことのほうが大変であるのは誰でもわかる。
安倍政権になってから若干だが公共投資額が戻ってはいるが焼け石に水だ。
一朝一夕に元には戻せない。

インフラが弱体化しているところに、「平成30年7月豪雨」のような大災害が襲いかかってくる。「公共投資・公共事業=悪」なる悪質な言説によって日本が壊されているといっても過言ではないだろう。

三橋氏は、「平成30年7月豪雨」を受けて、直近の記事(2018/7/11)において「日本国民全員が不作為による殺人者」とまで言い切っている。

「自然災害大国において、政府が自然災害対策の予算を削る、あるいは増やさないことは、間違いなく「不作為による殺人」」に該当します。橋本緊縮財政以降の日本政府関係者は、全て「不作為の殺人者」たちです。もちろん、安倍内閣も例外ではありません。そして、その種の不作為の殺人者を政治家に当選させた我々もまた、同類なのです。」三橋貴明『平成30年7月豪雨~不作為の殺人者たち~』 

三橋氏による痛烈かつ悲痛な指摘だ。返す言葉がない。


「攻めの投資」と「守りの投資」

投資漫画「インベスターZ」を織り交ぜて考えてみよう。
投資というものは得てして、投資してから実になるまでに時間差がある。
ベンチャー投資でいえば、将来ユニコーンにまで育つようなイノベーティブなベンチャー企業を見つけることができればホームランだが、現実は打率1割程度のヒットが関の山だろう。
さらに投資で利益がとれたとしても、次の投資の原資になる。
どんどんと資金が循環し前進していく「攻めの投資」といえる。

しかしながら「投資」は、衣食住が足りてこそ行えるものだ。
被災地に出向いて「投資案件が~」と触れ廻りでもしたら被災者の方に張り倒されるに決まっている。
まずは衣食住、つまり安全安心の確保が必須だ。

僕は衣食住をおびやかす災害を防ぐ「守りの投資」こそ、必要だと思っている。
道路を補修する、高速道路の迂回路を作る、橋桁を点検する、土建屋さんにきちんと資金を拠出して働いてもらう。
このような投資をしても、すぐさま役に立つかはわからない。余分なものとなってしまうかもしれない。
しかし一度消失してしまうと取り戻すのに大変なコストがかかることを思えば安いものだろう。「守りの投資」がなされないと、最悪の場合、人の命が奪われてしまうのだ。


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まとめ

「攻めの投資だけでなく、守りの投資にも目を向けてほしい。そして投資の意味の履き違えでインフラ整備がままならなくなっている現状を知って欲しい。」に尽きる。

投資を行うことは何も悪くない。お金の力でより良い世界が築けるのならどんどん投資すべきだ。

だが意味もなく、投資を毛嫌いしないでほしい。日本国民全員が思い知ったように、一見無駄にみえる投資が人命を救う可能性があるのだから。


7月13日(金)の深夜0時57分からテレビ東京系列ドラマ「インベスターZ」が始まる。
お世話になっている箕輪編集室が主催する箕輪書店でも漫画全巻セットが発売中だ。

7月12日(木)21時までに購入された方の特典として、インベスターZ編集者の佐渡島傭平さん、我らが幻冬舎の編集者 箕輪厚介さんと一緒にドラマ第1話を鑑賞できるチケットが付いてくる。

放映開始の約4時間前だが、近畿圏内、東北圏内辺りでも新幹線に飛び乗ればギリギリ間に合うだろう。そんな熱狂した人が飛び入りで参加してくれるのならば主催者は必ず大喜びしてくれる。一晩で一躍スターだ。私が保証する。


投資の力が試される時代に、投資の力を深く理解できるドラマが始まる。
なんて良いタイミングなんだ!!!

皆さんの投資人生に幸多きことを願って。

荒木 利彦

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