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【エッセイ】卵かけごはんの思い出〜それは「お父さんズルい!」からはじまった〜

わたしの実家では
「卵かけごはん」をするという習慣がありませんでした。

料理上手な母は、毎日ご飯に合うおかずを何品も食卓に並べてくれて、家族はご飯にあえて何かをかけて食べるということをしていなかったからかもしれません。


加えてわたしは、白いご飯が異常に好きな子供でした。
スーパーの惣菜売場で 「食べたい物を選んで」
と言われて、意気揚々と"パックに入ったご飯"をチョイスする子だったのです!
(祖母と母には笑われました。)


その頃のわたしにしてみれば、それだけで甘みと旨みのある美味しい食べ物、愛する「ご飯」に何かを加えて食べたいと思ったことがなかったのだと思います。



それが覆ったのはある日の夕食時。

 

献立は…


すき焼きでした。


母のすき焼きは、割り下でグツグツ煮込む、いわゆる「関東風」。
具は定番の牛肉、糸こんにゃく、焼き豆腐、ねぎ、春菊、しいたけの他…厚揚げ、白菜、大根、人参、えのき、うどんなどが入っていることもあり、具沢山で大好きでした。

アツアツのお鍋を食卓の真ん中にでんと置き
家族みんなでつつきます。
それぞれの取り皿の中には新鮮な卵。

さて、夕食が終盤に差し掛かった頃でした。

隣に座っていた父がおもむろに

取り皿の中の卵を…


ご飯にかけたではありませんか!!!



わたしはとっさに

「お父さんズルい!」

と言ってマネして卵をご飯にかけました。



何が"ズルい"のか分かりませんが(笑)
父だけすごく特別な事をしているような気がして
羨ましくなったのだと思います。


それは
お肉と野菜の旨みがたっぷり。
甘辛い割り下が卵と合わさって
最高の卵かけご飯でした!


父が教えてくれた
すき焼きの日だけできる
わたしの特別な「卵かけごはん」です。

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