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【エッセイ】ライバルは2週間前のわたし

わたしが調理員を勤める保育園の給食は、1ヶ月の献立のうち、同じメニューが1週間おきにやってきます。

例えば、3月1日(金)のメニューがカレーだったら
3月15日(金)のメニューもカレーなのです。

これは「反復式献立」といって、幼児は初めて口にする時より、2度目に口にする時の方が味覚の慣れから、食が進むようになると言われていて、幼い時期から好き嫌いを無くして欲しいという考えから、業者が採用しているそうなのです。

そんな「反復式献立」ですが、給食のおばさんであるわたしにしてみれば、つまりそれは、前回の自分の給食を改善できる、たった1度の貴重な機会と言えます。(たまに2度の時もあります。)

もちろん毎日、献立の作り方に沿って作っていますし、保育士にも検食してもらっているので、自分で言うのもなんですが、1度目に作る給食が、園児たちに提供できない程ひどい出来だという意味では決してありません。
みなさんの大切なお子様をお預かりし、そのお口に入る物を作るわけですから当然ですね。

同じメニューを2度以上作った経験のある方なら分かっていただけると思うのですが、同じように作ったつもりでも、ちょっとした火の加減や時間の違い等で、出来上がりに差が出ることがありますよね。
わたしはそれをより良い物・安定した物にしたいと考えています。

勤務先の保育園では、あまり味が薄すぎると園児が食べにくいので、味の調整をして欲しいという保育士からの要望を受けています。
また、食材の切り方は必ずしも作り方に記載されている時ばかりでなく、「食べやすい大きさに」とだけある時も。
詳細には記されていない、火加減や時間等で食材の柔らかさがずいぶん変わります。
それに伴って、調味料の食材への染み込み具合もまた。

そういった事から、園児たちの食べ具合いを見て、2回目に同じメニューを作る時には、自分なりに前回の感想や反省を生かすようにしています。
2週間前より美味しく、食べやすい給食を作ることが、わたしの密かな目標なのです。

保育園では、お昼以外におやつも作ります。
メニューはフルーツ、寒天ゼリー、おにぎり、お好み焼き、パンケーキ等、色々です。

蒸しパン・ケーキの場合は、人数分のアルミカップに生地を流し込み、スコーンの場合は人数分に生地を丸めてクッキングシートに並べ、オーブンレンジで一気に焼いているのですが、献立に記載された温度や時間通りに作った後、出来上がりを見てみると(あれ?もっと改善できるのでは?)と思う時があります。
もちろん美味しく食べられないことはないのですが、温度が高くて焼きすぎ、少し固くなってしまったかなと感じたり…
火はちゃんと通ってはいるけど、もう少し美味しそうな焼き色が付くといいかなと感じて時間を追加して焼いてみたり…

そんな時、わたしは
"未来のわたし"にメッセージを残します。

170℃で20分
予熱で5分置く

(献立の作り方より、温度は低めで、時間は長め、
予熱でふっくら)


献立表のはしっこに
ライバルが書き残した そのメモが

2週間後のわたしを
いつも
ちょっとだけ成長させてくれます。

         🍳🍳🍳



「鶏肉のちゃんちゃん焼き」も
2度目の方がおいしくできました!🧑‍🍳


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