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裏・桃太郎 その5

さ、鬼ヶ島に着いたぞ・・・

鬼ヶ島は真夏のような暑さでした。
それもそのはず、島には火山があり、
今も時々マグマを吹き出すのです。
鬼たちは劣悪な環境の中、なんとか暮らしていました。

ここに、鬼がいるはずだ・・・・

ドシン・・・ドシン・・・と大きな足音を立てて、
黄色の鬼が現れました。
あぁ、この前の噴火で、作物は全部イカれちまった・・・・

黄色の鬼が桃太郎たちを見つけ、言いました。
「あ?誰だ?見ねえ顔だなぁ・・・?」

「俺は桃太郎だ。」

黄鬼は、お館様の言葉を思い出しました。
「あん?テメェか?桃太郎ってのは!」

「そうだ、俺がお前たちを成敗する。」

「なんで、俺たちを?」
黄鬼は戸惑います・・


「湧水の村の人たちを苦しめているではないか。」

「なんのことだ?鬼は人を襲わねぇ・・・
なぜなら・・・」

「うるさいんだぁ!!」

黄鬼が何かを言い終える前に、
桃太郎は刀を抜き、
切りかかりました。

ガキィィン!!
鈍い音ともに火花が散ります。

桃太郎には、
刀が何か硬いものにぶつかった手応えが残りました。
手がビリビリと痺れます。

一旦飛び退き、黄鬼の方を見ると、

そこには一際大きな鬼、赤い鬼が立っていました。
赤鬼は黄鬼を庇うように両腕で桃太郎の刀を防いだのです。

その時、桃太郎は思いました。
「貴様が鬼ヶ島の頭領の邪鬼だな。」

「あぁ・・・?」
少し考えるふりをする赤鬼、
そして、「そうだ!」

赤鬼のその姿は山のように大きく、
桃太郎は思わず唾を飲み込みました。


「桃太郎、今こそみんなの願いを叶える時よ。
私たちも加勢するわ。
みんなでかかれば・・・」
雉見は拳を握りながら言いました。


一旦は弱気になりかけた桃太郎ですが、
弱気になってもいられません。
村のみんなの願いが、平和な暮らしがかかっているのです。


桃太郎は、意を決しました。
その時、桃太郎の目は今まで以上に、
赤く、燃えるように赤く染まったのでした。


静かに刀を体の横に構え・・・
体勢を低く取ります。
それはまるで、猫科の動物が敵に
飛びかかる前のようでした。

鬼たちを倒して、村を平和にするんだ。
「でええええぃ!」

桃太郎は叫びとともに、刀を掲げ、
一直線に赤鬼の間合いに入り、切りかかりました。

「なんの!」
赤鬼は大きな腕を振り、刀ごと桃太郎を吹き飛ばしました。
桃太郎はそのまま、地面に叩きつけられました。

「がっ!」思わず声が漏れます。
地面に叩きつけられた反動で、
一瞬、息が止まりました。

しかし、目指すべき首は目の前にあるのです。
すぐさま起き上がり、また刀を拾い、構えました。

「桃太郎、ここはみんなで連携よ!」
雉見が叫びます!

雉見は右へ、猿吉は左、戌井は回り込み、後ろから、
一斉に攻め立てます。

「ぐうぅ!」

赤鬼が一瞬怯んだ隙を桃太郎は見逃しませんでした。

「今だ!」

桃太郎は赤鬼の懐へ潜り込み、

「おおおおおおお!」
赤鬼の脇の下から肩にかけて、刃を振り上げます。
鮮血とともに大きな赤鬼の体がよろめきます。
そのまま桃太郎は、大きく跳んで刀を振り上げ、真下へ一直線に振り切りました!
「させるかぁぁ!」
赤鬼も力を振り絞り、逃れようとします。
しかし、その刹那、赤鬼の動きが止まりました。

ガッッ!
骨を砕く鈍い音が響き渡りました・・・
刀を防ぐために上げた赤鬼の右腕は真っ二つになり
吹っ飛んでいきました。

ザンっ!
そして、そのまま大きな赤鬼は脳天から
お腹にかけて真っ二つに割られ・・・・


ズシン・・・と声もなく倒れました。
赤鬼の体からは、
体と同じように真っ赤な血がたくさん流れていきました。

桃太郎は、その血に写った自分の顔に驚き、冷や汗が出ました。
それは、今まさに倒した赤鬼のようなそれでした。

憎しみに満ちた醜悪な顔だったのです。

「これが俺の顔なのか・・?」

「桃太郎やったわ!」
雉見が叫びます。

これできっと、平和が訪れるんだ。



その6へ続く

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