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裏・桃太郎 その6

透き通るような真っ白い肌の女の鬼が二人、
やってきました。

「桃太郎様!
お館様がお待ちです。」

なんと、鬼の頭領は赤鬼ではなかったのです。

白鬼に連れられ、
桃太郎たちは鬼ヶ島の奥へと、
歩いて行きました。

やがて、大きな屋敷があり、
一同はその中に入りました。

その奥には、
石でできた大きな布団の上に寝ている鬼がいました。
その鬼は全身が真っ青でした。

白鬼が青鬼に話しかけます。
「お館様、桃太郎たちをお連れしました。」

お館様とは、大きな青鬼だったのです。

大きな青鬼を前にし、
桃太郎が言いました。

「お前が、鬼ヶ島の頭領、邪鬼なのか?」

青鬼は深く響く声で言いました。
「そうだ。桃太郎・・・・いや、赤鬼よ・・・。」

「何を言っているんだ。俺は鬼なんかじゃない!
人間だ!桃太郎だ!」
桃太郎は思わず反応します。


青鬼は続けます。
「お前は、赤ん坊の頃に村へ送られたんだ。
覚えていないかもしれんが。」



「御託はいい。成敗してやる。」
そう言って、桃太郎は刀を構えました。

「そうよ、桃太郎は鬼退治のためにこれまで頑張ってきたんだ。」

雉見たちはそう言うと、桃太郎に続き
戦闘体勢を取ります。

「その刀でわしを切るか?」

桃太郎の刀から、
ボロっと刃がこぼれ落ちました。

青鬼はまだ話し続けます。
「俺は抵抗する気はない・・・しかし、
その前に少し話を聞いてくれないか・・
老いぼれの世迷言ととってもらってもいい。」

「今のお前の顔。確かに体は小さいかもしれんが、
お前の顔は鬼そのものだ。
さっき、桃太郎・・・お前も気づいたんだろう?」

桃太郎は心を読まれた気がしてゾッとしました。

「時折、鬼の中には「異能」と呼ばれる能力を持つものが生まれる。それが俺であり、お前だ。

お前のその真っ赤な眼!
いや、わしにはもう見えんが、、
感じるんじゃ。お前には瞳術(どうじゅつ)の相がある。

村人たちはどうだった。皆、お前の目を見た瞬間、
お前に協力的にならんかったか?


お前に敵対するものは、
破滅に陥ったはず・・・・

それが『瞳術』の力じゃ。

そして、村長はお前の瞳術に気づき、
決して、お前の目を見なかったはずだ・・・
そして、ほとんど会うこともなかったのではないか?」

桃太郎はハッとしました。

青鬼は続けます。
「村長は、お前を鬼と気づいていた。
鬼に村人を襲わせていたのは他でもない、
村長だったからじゃ。」

「嘘だ!そんなのお前の策略だろう。」

「そもそも我らは、人を襲わない・・・・
この鬼ヶ島の鬼たちは。そういう契約だからだ。」

「なんだよそれ・・・・」

「もしそれが本当なら・・・
村長は、鬼同士で戦をするように仕向けたということか?」

「そうじゃ。どちらに転んでも、
残った方を村長の息のかかった鬼たちで全滅させれば良い。
そう言う魂胆だ。


しかし、桃太郎・・・今ならまだ、引き返せる。
そして、お前には力がある。何より人惹きつける力が。
それは何者にも変え難い、素晴らしいものじゃ。

だからこそ、桃太郎。
お前なら、この現実を変えられるはず、、、
どうか、家族を、仲間を、友を、皆を大切にしてほしい」


その7に続く

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