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裏・桃太郎 その7

「なんで、俺を村へと?」
桃太郎は尋ねました。

青鬼は答えます。
「わしらには『水』が必要だったんじゃ。
湧水の丘を追い出された我々は、ここ、鬼ヶ島へ辿り着いた。
しかし、見て欲しい。ここは火山。

海の塩水では、喉を潤すことはできん。
そして、水がなければ作物は育たない・・・

だから、村の川から、鬼ヶ島へ、
少しずつ水を送ってもらっていたのじゃ。

つまり、我々は人を襲わない代わりに、
丘の水を少しだけ分けてもらう。
それが鬼と人との契約だったのさ。

桃太郎、お前にも、島に水を送る。
その役をになって欲しかったのじゃ・・・

まぁ、部下の鬼の失敗によって、
お前の揺り籠は川を流されていってしまったが、、」

ゴホゴホッ・・・
「大丈夫ですか?お館様!」
白鬼は心配そうに青鬼に声をかけます。
「親方様はもう何年も、食べ物はおろか、水も口にされていないのです。」

桃太郎は驚く、
「な・・・なんで?
そんなの嘘っぱちさ。だったら生きているわけがない・・」・

「そう、人間であれば、生きていないでしょう・・・
それでも命が続いているのは鬼のなせる業です。
それでも御館様の命もあと僅かなのです・・・

ですから、親方様の嫡男である桃太郎様に・・・」

「夜叉!!!」

轟音のように青鬼の声が響きました。

「申し訳ございません・・・お館様!」
白鬼は怯えるように謝罪をします。


雉見たちには理解ができません。

「なんだって?
桃太郎が青鬼の子どもだって?」

「そうじゃ。この鬼ヶ島にいる鬼も全てわしの子供達じゃ。
そして、桃太郎・・・お前もな・・・・

その証拠がお前の異能・・瞳術じゃ。
赤い眼。それが、何よりの証拠。

鬼にはいくつも種類があり、
体の色によってその役割が異なる。

黄鬼は人間に近い見た目で、能力も似たようなものだ。
だから、村に送られるのは、
こういった黄鬼の連中さ。

体が大きく力が強い赤鬼、
そして・・・いや、今は言うまい。」


桃太郎、お前もいずれ青鬼になる・・・。


青鬼はそう言いかけて、やめました。

「そして、白鬼は女形のみじゃ。
また、若い期間が長く、美形の多い白鬼は大名の側室に多い。
村長は裏で白鬼を大名たちに売り、金儲けをしているのじゃ。」

桃太郎・・・・お前は、自分のために生きろ!


桃太郎はいつしか、青鬼のことを信じてもいいかな。
と思いました。
青鬼の声は、嘘をついていないと。
なぜかそう感じてしまうのです。

それは桃太郎と同じ、青鬼の持つ異能の力でした。

「でも、鬼たちは何もしていないんだろう?
だったら、このまま・・・」

「わしたちは新しい場所を探すさ。
もうあの村では難しい・・・」

「なら、俺がこっそり、水を送るよ。」


「・・・ありがとう。桃太郎。
では村にいる紗夜という娘を尋ねなさい。
いろんなことを教えてくれる。」

青鬼はどこか遠くを見つめるように言いました。

「わしたちは・・・つつがなく暮らしたかっただけだ。
人の世とは相容れないのなら、せめて。
付かず離れずひっそりと・・・」


「わかったよ。もう帰るよ。
鬼たちはもう襲ってこないってことでいいんだな。

あとは真実を村長に問いただす。」
桃太郎の中には新しい決意が芽生えようとしていました。

俺は鬼かもしれない・・・
それを確かめ、真実を知る必要がある。


桃太郎たちが鬼ヶ島を出発し、
村に帰る頃には日が暮れていました。

村には、
不気味な雰囲気が息づいていました。


その8へ続く



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