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京都ライター的「NGワード」

こんばんは。25時を過ぎても寝られなくなったのでnoteを更新してみます。京都&着物ライターのカナです。

【創業125年はベンチャー企業】

先日、こんなツイートをしました。

佐々木酒造の社長さん(俳優・佐々木蔵之介さんの弟さん)をお招きしての日本酒講座へ行ってきました。

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↑引用:佐々木酒造さんのHP
従業員に数えられている猫さん…蔵には現在3匹の猫さんが暮らしているそうです。


佐々木酒造は京都・洛中(都の中心部)に残る唯一の蔵元さん。
こちら、創業が1893年(明治26年)と、京都の酒蔵としては新しい方。
そのため、佐々木さんの自己紹介では次のように語られました。

「うちはまだ創業125年。京都で言うたらベンチャーですわ〜。笑」

もちろん、ご謙遜されての発言ではありますが…。

京都では「創業年数二桁は【老舗】にあらず」

794年から都だった京都では、酒蔵だけでなく和菓子店、お香、和装小物など創業200年以上のお店もたくさん。
そのため、125年というのは新参者とは言わないまでも「ベテラン」ではないというのが京都の常識なんです。

「うちはまだ100年ちょっと、新しい店なんですわ〜」という会話は、実はいろんなお店でされています。

では、どの基準で「老舗」と呼ぶのかというと、、、明確なルールはありませんが、私がガイドブックの編集をしていた頃は「二桁なら”老舗”とは書かない。100年程度なら、『歴史のある…』『旧くからある…』などと”老舗”以外の言葉で表現」していました。

老舗という言葉を避けて、ぼかすという…。
「そんな表現で逃げるんかい!」と言われそうですが、これは老舗にも新しいお店にも敬意を払った配慮なのです。

「ほっこり」は素人っぽいのでNG

優しい味のおばんざいは「ほっこりしますね」。

この”ほっこり”は、最近では全国的に使う人が増えているものの、元は京都弁でした。
心がやわらく、ほっとする、なんとなく優しい。・・・明確に「これ」という意味はなくて、おそらく京都人も感覚で使っていると思われる、曖昧な形容詞。

「ほっこり」と表しておけば「ああ、なんか気持ちいいんだな」というのは伝わるのですが、如何せん『曖昧な形容詞』。
プロのライターたるもの、「何がどう美味しいのか」具体的に書くのが仕事です。

そのため、私が編集する文章では原則「ほっこり」は避けていました。だって、どんな物にも使えてしまうパワーワードですから。
安易に多用すると文章が安っぽく見えてしまうと思うんです。

何がどういう風に「ほっこり」なのか、それを伝えるのが大切です!

「店主こだわりの…」は本来ネガティブワードなのでNG

そして、これは京都の記事に限らずですが、「こだわる」も私は使わないことにこだわっていました!笑

理由は二つ。

その1:「こだわる」は元はネガティブな表現だった

「あの人、細かいことにこだわって…小さい人やなぁ」などと、本来は悪い意味で使われる言葉です。
時代は変わり、現代ではポジティブに使われることも増えましたが(これを是とするかはさておき)、元の意味が意味ですので、なるべく他の表現に置き換えました。

外向きに発信する文章、誰がどう受け止めるかは計り知れませんので、できる限り正しく、誰かを傷つけることのないような言葉選びもライター・編集者の仕事の一つなのです。

その2:店主が「こだわり」持ってなくてどないすんねん

飲食店や洋服のブランド…どんな形であれ、商売をするのであれば「ウチの味には十勝産の小豆しかアカンねん!!」 と素材や製法に独自性を出す(≒こだわる)のは当たり前のこと。

むしろ「こだわり」のない店なんて嫌やわ、って感じですよね。

それなのに、文字数に限りある本の記事に「店主こだわりの…」は余計なひと言ではありませんか?
もしこういった意味の表現を加えたいなら、辞書を引いてそれに代わる適切な言葉選びを…!

まとめ:雰囲気で言葉を選ばない

適当に呟くつもりだったのに「まとめ」の項まで作ってしまった…。

「店主こだわりの」「ほっこりする優しい味」…字面だけ見ると、それなりにかっこ良く見えますが、限りあるスペースで表現をするには、もっと適切に・具体的に伝わる言葉があるはずです。

時々見かけるのですが…ふわっとした形容詞・見栄えのいい漢字を並べてかっこ良く見せている文章があります。

形容詞に形容詞を重ねて、あれ?主語は何だったっけ、、、とモヤモヤ感の残る文章。

それならば、「これめっちゃ美味しかったです❤️」とひと言書くほうが興味を引くし、ストレートに伝わる・・・・のかはわかりませんが、

とりあえず「ライター・編集時代に意図して使わなかった言葉がある」というのをお話したくなったので書いてみました。

最後までお読みいただきありがとうございました!

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