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【第7回】『ネガティブ』ヴァンフォーレ甲府観戦記~J2リーグ第6節 vs長崎~

前回、読者に観戦記とは何なのかと思わせる謎の大作を書き上げてしまいましたので、今回はシンプルにゲームを振り返りたいと思います。前回も個人的には気に入っているので、お時間ある方は是非ご一読ください。


改善しない甲府守備の脆弱さ

--前節から先発を5人入れ替えたことについて。
1つは連戦だということ。アウェイ・山形で新幹線が止まるなどアクシデントがあって、移動に長い時間がかかった。次のホームゲームは嵐で中断があって選手は体が固まって疲れも出た。できないわけではないがトレーニングができているフレッシュな選手を使いたかった。チームのモチベーションを高めるためにも、フレッシュな選手を使ってみたかった。

ヴァンフォーレ甲府 監督 篠田善之

コンディションとモチベーションの観点から、フィールドプレイヤーの半分にあたる5人のスターティングメンバーを入れ替えた甲府。主に内容の面で課題を残した前節から、フレッシュなパワーを注入することで変化を生むことができるかが見どころでした。

試合開始早々、甲府は4-4のラインを整えつつ、飯島がインテンシティの高いプレーで長崎DFの自由を奪いにかかります。しかし、長崎は開始5分程度で2CBにアンカーとGKを加えた4人のパス交換を開始し、飯島・ウタカの前プレ部隊を無力化します。アタッキングサードでは、左サイドバック米田が高い位置へ侵入し、左ウィングの笠柳がハーフスペースに甲府右サイドバックの関口を釣り出すことでチャンスを創出。7分・9分と立て続けに攻撃の形を作られ、甲府は開幕戦で徳島の西谷・髙田のユニットに再三やられた形を再現してしまいました。サイド守備の脆弱さはACL蔚山戦からの課題であるため、対応できなくては今後ものにできない試合が目立つようになると思います。開幕戦の観戦記もまだお読みでない方は是非ご一読ください。


一瞬の隙、走る電撃

守備時に鳥海が右サイドバックの位置まで下がってなんとか対応するようなシーンが続く甲府は、全体が押し下げられなかなか自分たちの時間帯を作り出せずにいました。しかし、そんな中で一人気を吐いたのが、新加入の外国人MFアダイウトン。自陣で奪ったボールを預かれば、強靭なフィジカルでキープしマイボールの時間を作り出すことで、ショートカウンターのピンチを防ぎ、長崎に流れを完全に持っていかせることはありませんでした。

すると24分、充実の内容でゲームを進めていた長崎に一瞬の隙が生まれます。長崎のCKのこぼれ球を収めたGK渋谷が、猛然と左サイドを駆け上がる関口にスロー。攻め上がる仲間を見渡した関口が、最後は長崎最終ラインへスルーパスを送ると、長崎DF飯尾のファーに走り込んでいたアダイウトンがニアへと電光石火の飛び出し。難なく合わせて先制した甲府が、この直後から少しずつペースを掴んでいきます。

--相手のカウンターに対する改善点は?
オープンプレーで自分たちが攻撃を組み立てていたり、攻撃をしているときのカウンター対応の用意はしてきました。セットプレーはもちろん選手たちも十分気をつけていたとは思うのですけれども、自分から見ていても一瞬ポンと少しスキがあったように見えました。戻るところも遅かったなと思いますし、最後のところも甘かったなと思います。

V・ファーレン長崎 監督 下平隆宏

ようやくボールを握れるようになった甲府でしたが、ウタカ・アダイウトンの普段はカウンター要員の二人に前半45分やらせるとこうなるだろうなという感じで、40分過ぎから圧を高めてきた長崎の攻撃に手を焼くシーンが増え始めました。それでも前半をゼロで凌ぎ切った甲府が、前半を1点リードで折り返します。


ターニング・ポイント

後半も立ち上がりから長崎が主導権を握る展開の中で、甲府守備陣は立て続けのセットプレーを耐える時間帯が続きました。そこで甲府は56分、ウタカに代えてラッソ、飯島に代えてマンシャを投入し、5B化することで後方の守備強度を確保します。

ファイナルサードで幅に対応できるようになった甲府が、やや守備を安定させたかに見えましたが、重心が低くなる分前から規制をかけることが難しくなり、過密日程による疲労もあいまって、守備に追われる時間帯から抜け出すことはできませんでした。70分に関口が笠柳とのマッチアップに完全に敗れると、71分、サイド攻撃を警戒した甲府ボランチ三沢・林田の虚を突いた縦パスが、長崎MFマテウスに入りラストパス。最後はフアンマが甲府最終ラインとの駆け引きを制し同点弾を決め、甲府は守勢に回った甲斐無くリードを失います。

5バックはピッチ幅に対応できる非常に守備に効果的なフォーメーションであり、甲府はここまで勝ち試合では試合をクローズさせるために試合終盤によく採用してきた常套手段でした。しかし、ボールを奪い攻撃を開始する位置も必然的に低くなり、運動量の落ちる後半に自分たちの時間帯を作り出すことが難しいシステムとも言え、カウンターに秀でたウタカ・アダイウトンのユニットもいないこの試合後半の甲府にとっては、1点差のスコアと共に「心中」するような采配だったと思います。このリードを失った甲府の精神的な苦しさは相当なものだったでしょう。


正念場

その後は期待の若手FW内藤の投入など、前向きなシーンもありましたが、相対的にプレー強度で上回れない甲府はクオリティを欠き、ゲームは1-1で終了。どちらにも勝ち筋があっただけに、文字通りの「痛み分け」となりました。

こういうゲームを勝ち切れるチームにならないといけないですし、惜しかったで済まさないように。

V・ファーレン長崎 MF #17 秋野央樹

先制点を奪うところまでは良かったものの、ゲームのほとんどの時間主導権を握ったのは長崎であり、実際ボール支配率は長崎が60%、シュート本数も甲府の2倍。勝ち点1とはいえ充実の内容を見せた長崎は前を向ける一方で、甲府は前節の課題であるゲーム内容の改善が見られず、先制点を守りきれない試合運び・チーム全体のマネジメントといった課題も浮き彫りになりました。

甲府はここまで3勝2分1敗と決して悪くない戦績を残していますが、他のJ2クラブはルヴァンカップも戦っており、より厳しい日程の中で結果を出しているクラブもあります。ACL効果でコンディションを上げた中で開幕を迎えた貯金は既に使い果たし、早くもチームの総力が試される局面を迎えています。この3連戦を1勝2分の負けなしで乗り切ったという結果をポジティブに捉え、約1週間で山梨と鹿児島を往復し最後には清水との富士山ダービーが待ち受ける次の3連戦に活かしてほしいですね。

いつもちょっとひねったものを書こうとするせいで、めちゃくちゃ普通に試合をまとめた今回のような観戦記を書くとどう締めていいか難しいところがありますね。なにはともあれVamos Kofu!!!

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