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【セミナーレポート】マネーフォワードVPoEが語るエンジニア組織の英語公用語化とPROGOS®活用

業界を問わず深刻な人手不足が懸念されるなか、特に高度IT人材の獲得は熾烈な競争が繰り広げられています。優秀な人材獲得にはグローバルに視野を向けざるを得ない状況下において、日本企業が直面する課題――それが、英語です。

今回、開発部門での英語公用語化完了に向け、いち早く本格的な取り組みを始めた株式会社マネーフォワードのエンジニアリング戦略室 室長 兼 VP of Engieeringの高井 直人氏をお招きし「グローバル化に挑戦する組織やエンジニアに必要な能力とは?」と題したセミナーを開催いたしました。
同社のエンジニア組織「英語化」の全容と、目標設計やレベル把握のツールであるPROGOS®について、セミナーレポートとして当日の内容をまとめてお届けします。

(メイン登壇者)
株式会社マネーフォワード
エンジニアリング戦略室 室長 兼 VP of Engineering
高井 直人氏

Part.1  マネーフォワード社の取り組み紹介

高井氏:
マネーフォワードでは、2024年度末までにエンジニア組織の公用語英語化を発表しています。
そもそも、当社では2018年にベトナム現地法人を設立。ホーチミンとハノイに開発拠点があります。同じ年にグローバル新卒採用も開始しました。当初は、採用候補者の《日本語能力》を要件に入れていましたが、2022年より《日本語能力不問》に変更しています。

「英語化」の狙いは2つあります。
①優秀なエンジニアの採用拡大
②将来のグローバル展開への布石

「日本語能力」という要件があると、優秀なエンジニアの獲得はハードルがぐっと高まります。それがボトルネックになって採用難になるのなら、受け入れ側の我々が英語化しようと考えました。また、人口減少社会に入った日本市場の成長性には限界があります。将来必ず事業のグローバル展開に踏み切る時が来ることも、英語化推進の決断を後押しするファクターでした。
そこで、2021年10月より「英語化」推進の取り組みを開始しました。

~実施したこと~
・英語話者のみの開発組織立ち上げ
・人事に「英語化」推進組織を設置
・先行事例の調査(楽天、メルカリなど)
・英語化推進組織に英語のプロがジョイン
・現時点での英語力測定(現状把握)

英語化を推進するにあたっては「ビジネスで使う英語」に着目した測定指標を手段を定めることを重視しました。

日本企業では、TOEIC®L&Rスコアを英語力測定の手段やレベル判断指標においているケースが少なくありません。但し、これはあくまで「読む・聞く」であり、英語を「話す」力を測定するためのテストではないのです。
たとえば、私自身はTOEIC®L&Rスコアが890点を取ったことがあり、そのスコアは「非英語母語話者として十分なコミュニケーションができる」と評価されるのですが、実際にはそこまでスムーズにコミュニケーションできませんでした。TOEIC®L&Rのスコアが高くても、必ずしも英語を話す力が長けているわけではないのです。
もちろん、TOEIC®L&Rは基礎的な英語力を高めるための学習やテストとしては優れた指標なので、当社ではTOEIC®と英語スピーキングテストPROGOS®を組み合わせて研修を設計することにしました。
PROGOS®を採用した理由は下記の通りです。

また、研修設計ではレベルに応じて4段階のステージに分けました。

この設計は、エンジニア組織のケイパビリティをベースに設定しました。
エンジニアが業務で使う英語は読み書きが中心で、会話は定型的なケースが多いです。そのため、TOEIC®→PROGOS®という順番にしています。
また、一人ひとりが自律的な英語学習者になれるように、学習手段としてはコーチングやグループ学習を取り入れました。目標を定めて終わりではなく、きちんとステージアップしていける設計や体制も同時に組み立てることが重要だと考えております。
結果、研修後に約85%がTOEIC®L&Rスコア150点、PROGOS®で1レベルアップするという成果が出ました。

なお、当社における「英語化」展開にはいくつか種類があります。

①単純移行型:既存チームに非日本語話者を配属して英語に切り替えていく
②細胞分裂型:まずは英語化チームを育成し、各自事業に分割して埋め込む
③垂直統合型:工程分業的だったチームを、英語化で垂直統合する

…たとえば、当社のベトナム拠点と日本拠点と工程分業のようになってしまっているケースもありました。しかし、両拠点のミーティングを英語化し、両方のマネージャーが相互のミーティングに参加するようになったことで、認識の齟齬による手戻りなどが減少しています。

最後に、「英語化」を進めるうえでのポイントをご紹介します。
◆第二言語の英語で業務をする以上、従来通りのスタイルに固執しない
…使用言語が変化すれば、当然ながらスタイルも変化します。生産性が下がるように感じるかもしれませんが、逆に英語を使うことによって海外の先進事例を取り入れるチャンスが広がるとも言えます。

◆心理的障壁を取り除く
…「なぜ英語じゃないといけないの?」という疑問は、英語化定着の妨げになりやすいので、必要性をきちんと理解してもらえるように発信しましょう。また「英語力と仕事のスキル、どっちが大事なんですか?」など《AかBか》というゼロサムの考え方が生まれやすくなりますが、むしろ《AもBも》という考え方の理解を促進することも大切です。

◆達成目標と支援はワンセットで提供する
…既に述べた通りですが、ただ目標を立てただけで「あとは個人でがんばれ!」では、英語力の向上は見込めません。目標を掲げるなら、必ずそこにたどり着くための手段も準備することが大切です。英語学習を自己研鑽に委ねず、研修や制度設計、実際の学習手段と合わせて提供しましょう。

当社の取り組みを通して、英語化はグローバル化とダイバーシティ実現の第一歩だと痛感しています。そして、全社で推進するには経営レベルでのコミットメントが欠かせません。必要性やコストの理解はもちろん、日々の業務から企業文化に至るあらゆる点で変化が必須となるからこそ、必然性や効果測定がしっかりと行える方法を取り入れて、英語化を推進いただくのが良いと思います。

Part.2 AIビジネススピーキングテストPROGOS®と国際基準CEFRのご紹介

Part.1にも登場したAIビジネススピーキングテストPROGOS®は、英語を「話す力」(スピーキング力)を測定できるテスト。4つの特長があります。

PROGOS®の4つの特長

また、PROGOS®は言語の国際基準であるCEFR(セファール)に準拠しており、テスト結果のCEFRレベルはグローバルでそのまま通用します。

近年、CEFRを人事制度の指標に取り入れたり、研修や採用活動でPROGOS®を活用する企業は非常に増加しています。従来、定量評価がしづらかった英語を「話す力」を定量的に測定・可視化できることで、評価指標や人材採用など公平性が求められるシーンに活用できるからです。

また、英語学習の観点で言えば、英語を「話す力」を測定すれば効果的な学習ができる、研修設計や評価に反映しやすいというメリットがあります。

このように、英語を「話す力」を測定する重要性の高まりとともに、PROGOS®とCEFRの活用もどんどん広がっているのです。

※PROGOS®の詳しい説明はこちらをご覧ください。

Part3. トークセッション

最後に、高井氏とのトークセッションを行いました。

Q. 英語化を進めるうえで、どのような組織間連携や協力体制構築を行われているのですか?
A. プロジェクトチームには、人事・語学教師・エンジニアという3種類の職能の人たちが集っています。部署横断的なチームとして立ち上げることで、着実な英語化推進を目指しています。

Q. 英語化に伴う英語学習に対して、マインドセットやモチベーション維持の働きかけはされていますか?
A. 具体的にモチベーションキープの方策という点で何か行っているわけではないのですが、当社の文化やバリューの中に《フェアネス》という考え方があります。たとえば、同じ組織に英語話者がいるのであれば、日本語だけではなく英語も取り入れるのがフェアだ、という考え方は、企業文化として根ざしています。そのため、英語の必要性は受け入れてもらいやすかったと思いますし、英語でコミュニケーションする場が多ければ、それがモチベーションキープにつながっている面もあると思います。

Q. エンジニア領域ならではの英語化の難しさはありますか?
A. 実は、専門用語は英語の方が通じやすいかもしれません。たとえば、エンジニアが“Array”と言ったら、日本人でも外国人でもそれは「データの配列」を意味するのが共通認識です。英単語の意味だけでとらえると逆に混乱するかもしれませんね。
一方で、当社事業に関する用語の英語化はむずかしさを感じますね。たとえば「インボイス制度」「適格請求書」など、サービスにかかわる日本語を翻訳したり英語で理解しようしたりするのは、なかなかハードルが高いです。

Q. 今後の展望をお聞かせください。
A. 短期的に言えば、ビッグテックや西海岸のスタートアップなどで人材の流動化が起きており、グローバルマーケットにおいて優秀な人材を獲得するチャンスが増えています。中長期的に言えば日本国内の人材不足問題は確実なので、その両側面から考えて、組織全体でグローバルを視野に入れた取り組みが必ず必要になるでしょう。「気づいた時には遅かった」とならないように、しっかりと進めていきたいと思います。

Q. 最後にメッセージをお願いします。
A. 実際に英語化を推進していて最も難しさを感じたのは、現実に起こっている問題ではなく、想像のなかで困る「杞憂」を打ち破ることでした。(うまくいかないかもしれない…)(こんな問題が起こるかもしれない…)と思って立ち止まるよりも、現実の問題にきちんと向き合い、一つずつクリアしていくのが大切だと痛感しています。英語であれ組織の問題であれ、少しずつ取り組めば乗り越えられないことはありません。まずはトライしてみて、そこから出てきた現実的な問題をクリアしていくのが、英語化推進のカギになると思います。


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