初めて手相占いに行った話。

 この前、仲間内で『占いは信じるか?』という話になった。
その話を始めた張本人が
『俺はね、基本的に信じないんだけど、手相は信じてるよ‼︎』
と言った。その人は中々に独自の理屈を貫く人なので意外だった。
『理由はね、俺の手相、中々ないメチャクチャ強い線があるらしいんだよ‼︎だから信じる‼︎ハハハ笑笑』
…意外じゃなかった、独自の理屈だった…。
「良いこと言われたから信じるってことですか?笑」
『うん!そう!笑』
潔いな、ものすごく。そして、めっちゃ良い笑顔。

 ということで、数日後、私は友人とショッピングモールにある映画館に出かけたついでに、映画館の向かいにある手相占いブースに居たのだった。『お試し価格、500円!』というやつだ。占い師のおばさまに声を掛けて、三者面談みたいにテーブルセットに私達は腰掛けた。

『さ、どっちから見る?』
「あっ、私で。どっち手ですか?」
『両方両方!』
「あ、ハイ。」
アルコール消毒をして手を差し出す。なんか緊張しちゃうなぁ、手汗滲みそう笑 おばさまは拡大鏡を手に見ていく。

『えっとね〜、好き嫌いがね、ハッキリしてるね!そうでしょ?』
「そうですねえ〜」
 ここまではまあ、割と誰にでも当てはまるだろうなぁ。

『そうね〜、結構何にでも手を出すでしょ?
行動力はね、あるわね。』
「なんにでも…そう、ですね」
 確かに何にでも手を出す。広く浅く、時に深く。興味のムラが激しい。雑学なら得意。

『あとね、曲がったことが大嫌いよね〜。ズルはしたくないタイプ。筋が通ってるって納得しないと嫌なのよね。』
「ふはは笑」
 確かにそうだけど、手しか見せてないのにあたかも知っているようで、心当たりもあるから面白くなってくる。

『それで、あなた人から指図されたりお説教されるの嫌いでしょ?ね、そうでしょ?笑』
「!!確かに言われてみれば…笑笑」
 確かに、中学の時の先輩やバイト先のヤンママ風社員の理不尽な説教だとか、上から目線で偉そうに誰もが知っているような事を、自分の武勇伝をひけらかして助言してくる薄っぺらい大人だとか、そういうのが大嫌いだ。好きな人はいないと思うけど。
 そもそも説教というのは、本来ありがたいものらしいが、こういう時は『自分にはこの話は要らん』と思いながら聞いてるので、全然ありがたくないのだ。なるほどなーこれを『指図や説教が”嫌い”』と表現されるのかぁ。自分の気持ちを形容される様が楽しくなってきた。

『今さ、新しく何か大きい事やってる所?』
「!?あ〜、就活的な事してて、今まで自分頑張ってきた内容がやっと合致する所が見つかって、ほぼ決まりそう、みたいな感じで色々やりとりしてますね。」
 ちょっとビックリ。今となれば会話術というかカマ?掛けられてるのかなという気もするが、そんな事は良いのだ。だってこの会話がすごく楽しいから。確かに私は、大学に入ってここ3年近く頑張ってきたことが実を結びそうになっており、点と点がやっと線になってきた、みたいな所にいる。

『そうなのねぇ。決断力はね、あるのよね。ほら好き嫌いがハッキリしているでしょう?だから、必要な事と不必要な事を割り切る力は持ってるの。でもね、1つ1つね、コツコツやらないとダメよ。わかるでしょ?』
「ハイ笑 わかります。」
 思わず笑ってしまった。ずっと小さい頃から言われてきた事だ。飽きっぽくて違うと思ったら別な楽しそうな事を始める。興味の赴くままにやるので、勉強に関しても、好きな分野はトコトン、しかし苦手な部分はズルズルと中々進まない。その分時間を掛けてコツコツやらなければ力が付かないのだ。
 これはまるで小学生のお説教のようだ。でも全然嫌じゃなくて、温かい。

『あなたにはスポーツマン的なストイックにやる根性がある。だから頑張れるはずよ。』
「おおお、ありがとうございます。」
 すごい、励まされてしまった。占いってこういう感じなのか。占いって、未来の運勢を占う!みたいなイメージだったけど、こんなに対話型で話を聞いてくれるものだったんだ。

『なにか他に聞いておきたい事あるかしら?』
「アッ、あの今頑張ってやってる事って、こういうアプローチでやって行って正解なんですかね…?」
 占い師さんとの対話で色々見透かされてて凄いな、という気持ちになっていた私は、超占いっぽい、未来ぽい事を聞いてしまった。
『それはねぇ、追加料金で生年月日聞いて、未来を見ないといけないから笑』
「なるほど…笑」
 そういう営業なんだ笑 これお試し価格だもんな、確かにこんなに聞いたら図々しいよな。

『でもあなた、そんなこと聞いても、説教とかアドバイス嫌いなんだから必要ないでしょ笑』
「!!アハハ笑 たしかにそうですね笑」
 これは1本取られたわー笑、と個人的に思った。話上手いなぁ、占い師さん。完全に占い師さんのペースに乗せられている。 

『また何か聞いて欲しくなったらおいで。毎週土曜日にいるから私!!』
「はい!!」
 めっちゃ素敵。普通に私、おばさまのファンになりました。的確に性格を言語化してくれて、なんか客観視出来た感じがする。占いってこういうコミュニケーションでセラピーするみたいな感じもあるんだなぁ。ほっこりするわ〜。

『あとね、もう少し勉強したら、知能線も伸びるわよ笑』
「…はい笑」
 それ、暗にディスってます?笑 頑張れば伸びるんだから、もっと勉強しなさいよっていうエールだと受け取った。

大体全体通して、こちら側の受け取り方と当てはめ方次第ではある。だか、こんな風に対話するのなんて、学校の先生くらいだ。
そして、占い師さんも聞き方と話し方がプロなので、占いが当たってる当たってない関係なく楽しいのではないだろうか。

はじめに占いの話をしてくれた人も、私も友人も、信じたいものを信じればいいのだ。
貰った言葉を受け取って、それを心に留めて、ふと「なんか色々エラい人に助言貰ったけど、生かすも流すも自分次第だからな〜、だって指図嫌い系だから。」とかって、勝手に自分の中でブルゾンちえみの『35億』のアクションをしながらドヤ顔でカメラ目線をするか、PCのエンターキーをスタァン!!!って華麗に押しながら、こともなげにモニターに目を漂わせていればいいのだ。


皆さん、占い、行ってみてください。
イメージ変わるかもしれないですよ…

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?