魔人

 〆切前夜、日付を跨いで当日の午前二時。部屋には仕事が進まずうなだれる男。

 魔法でも小人でもなんでも誰かこの仕事を終わらせてくれないかという、よくある夜のコントです。


魔人

 部屋に一人でいるA
A:あー暇だなー
 退屈そうに部屋を見渡す
A:あー、正確にはやらないといけない事が複数順番待ちしていて、とても暇とは言えるような状態ではないけど、それに対してのやる気と体力が追いついていない為ただただ時間をむさぼっているなー
 部屋に突如頭にターバンを巻いたBが現れる
B:フォッフォッフォ
A:うわー!なんだお前!
B:魔人だ
A:魔人?
B:そう、魔法の魔に、人類の人と書いて魔人だ。
A:ええ?魔人!?なんで俺の部屋に魔人が!
B:フォッフォッフォ
 なにかを期待してるA
 ずっと何もせず偉そうに立っているB
A:…なにかしないの?
B:わたしは、“なにかをしてくれそう魔人”だ
A:なにかをしてくれそう魔人…
B:そう
A:なにかを、してくれる…わけではない…?
B:そう。あくまでなにかをしてくれそう魔人だからな
A:なにをしにきたんだ!
B:まあ、お前の条件次第では、なにもしないわけではないかもしれんな
A:え?
B:さらばだ!!!
 消えていくB
A:あー!!!なんかしてくれそうだったー!!!!
 くずれおちるA
A:あーなんかしてくれそうだったのになー…くっそー
 諦めたように机に向かう
A:そんな都合のいいようにはいかないか…仕事しないと
 突如Bが現れる
B:フォッフォッフォッ
A:うわー!
B:魔人だ
A:魔人だ!
B:悪魔の魔に、神と書いて魔神だ
A:階級が上がった!
B:さきほどはなにかしてくれそう魔人がしつれいした
A:あ、じゃああなたは違う力を持つ魔人なんですね!
B:そうだ
 Bが部屋の中をウロウロしだす
 そのたび指を鳴らしていく
A:…なにをしてらっしゃるんですか?
B:ああ、私は“掃除の時に見落としがちな場所を綺麗にする魔神”だ
A:あ、ほんとだ(部屋の隅に目をやりながら)
B:さらばだ!!!!
 消えていくB
A:あー!!!
 崩れ落ちるA
A:床がすべすべになっている…(崩れ落ちた体制のまま床を触る)
 諦めたように立ち上がり、机に向かうA
A:だめだ。魔人だよりじゃだめだ。仕事しないと…
 机で再び作業をし始めるA
A:締め切りもう明日だもんな。いやもう今日か。
 時計をみるA
A:くっそ…あと何時間だこれ…あと8時間か。あいつの作業もまだ終わってないから…
 突然Bが現れる
B:フォッフォッフォ
A:あ、魔人だ。
B:さきほどは“掃除の時に見落としがちな場所を綺麗にする魔神”が失礼した
A:あ、じゃあまたまた違う魔人なんですね
B:私は、麻雀の麻に尋問の尋と書いて“麻尋”だ
A:麻尋?!それはどういう存在?漢字から推測ができない!
B:さらばだ!!!!!
 消えていくB
A:なにしに来たんだあんた!
 だんだんイライラし始めるA
 頭をかきながら机に向かう
A:くっそ…やっぱり限界あるな…二人で進めないと無理がある。早く帰ってこいよ…
 作業をしながら愚痴を言い始める
A:そもそもなんなんだあの魔人たちは!魔法で仕事終わらせてくれるのかと思ったら全然役に立たないじゃないか!というかなんでみんな同じ見た目をしているんだ!まぎらわしい!
 突然Bが現れる
B:フォッフォッフォ
 AがBをにらみつけ、無視して仕事を続ける
B:…フォッフォッフォ
 A無視する
B:…フォッフォッフォ!!!
A:うるせー!!!!
 Bがすこしおどろく
A:こっちは仕事が忙しいんだよ!あと締め切り8時間切ってるんだよ!魔人とか言って出てくるんだったらちょっとは役に立ってくれよ!
B:うるせー!!!
 驚くA
B:うるせー人間!せっかく下界に来て助けてやろうと思ったらこれだ!おまえこっちの世界に出てくるのにどのくらい魔力使うと思ってんだよ!
A:知るかそんなもん!
B:言ってみろ!
A:は?
B:どのくらい魔力使うと思うか言ってみろっていってんだよ。そんなに忙しいほどお偉い人間なのかお前は!魔人に対してそんな口を利くんだったらな、こっちに来るのにどのくらい魔力を使うか当ててみろってんだ!
A:ぇえ………2万!!!
B:6億パルプスだ
A:なんだその単位は!!!!
B:6億パルプス使ってこっちまで来てんのになんでそんな扱いされないといけないんだ!
A:わからないんだよその6億パルプスの価値も!おまえもどうせなんの役に立たないしょうもない魔人なんだろ。おまえは何魔人なんだよ
B:私は“正確にはやらないといけない事が複数順番待ちしていて、とても暇とは言えるような状態ではないけど、それに対してのやる気と体力が追いついていないためただただ時間をむさぼっている時にその原因となるものを理想的な形で解決する魔人”だ。
 目を見開くA
A:え…おまえ…まじかよ…
 焦るように自分の机に駆けつけるA
A:じゃあ、じゃあこの仕事とかを全部終わらせてくれたりもできるのか
B:お安い御用。そのためにいる魔人だ。
 ピシリと姿勢をただすA
小:あの、先程までのご無礼、大変失礼いたしました。締め切りの迫る仕事や個人的なストレス等の鬱憤を、そんな事情も知る由もないあなたに対し、八つ当たりしてしまいました。お許しを。
B:まあそこまで丁寧に侘びを入れるのなら、許してやろう。
A:感謝いたします。大変厚かましいとは理解しているのですが、我々のこの仕事を、なんとか既に終わっている状態にしていただけないでしょうか…
B:ほう…
 ゆっくりと机の方に向かうB
 うやうやしく案内するA
B:これかね
A:はい、こちらになります。
 Bが指を鳴らす
B:これでいいかね?
A:おお、おお!終わってる!終わってる!全部終わってる!やったー!わーい!わーい!
B:わーい!わーい!(ターバンをとって一緒に喜ぶ)
A/B:わーい!わーい!わーい!
 二人でハイタッチしたりして盛り上がる
 一息つく
 二人で肩を落とす
 真顔になってゆっくり二人ゆっくり顔を見合わせる
B:仕事するか
A:うん
 ふたりで机に向かう

暗転

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コニシムツキのnoteです。
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