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「便利」は人を不幸にする(新潮選書)

東日本大震災の直前から2年間に渡って書かれた一冊。

新型コロナの影響で家にいる機会が多くなってから、ふとこの書名を思い出した。改めてパラパラと目を通していて、2011-2013年当時とまた違った形で同じことが巡ってきているような気がした。

しかし、いま、価値を抜きにして社会のことも科学技術のことも人間のことも、考えることは出来ない。加藤さんは、いまこそ日本社会の価値を変えるべきだと言う。
「価値というのは、一人の人間が生まれてからの育てられ方とか教育とか、いろいろな要素で形成されていくものです。それが日本の場合には、『便利』とか『快適』とか、あるいは『速い』とか『安い』とか、そういう方向にずーっと流れてきていたわけです。それに対して、ちょっと考え直してみようかという雰囲気が、今回、出るかどうか」
この見立てが正しいとすれば、「便利」がもたらす不幸な状態は、ひたすら強固になり拡大していくことになる。そのための駆動力は2つある。第一は、利便性自体が次なる欲望を喚起するという、個人の欲望レベルでの強化サイクル。第二は、利便性によって顕現化される効率性追求システム。これは労働弱者によって構造的に支えられているが、被抑圧者もまたその抑圧構造の内部に閉ざされており、その中でわずかに上昇することを目指すしか選択肢が容易されていないという閉塞性を伴う

#科学技術 #ゆたかさ #社会の変化

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