風力発電 反対運動への挑戦状

 再エネ転換は、どの地域であれ、もう具体的に進めていなければならない段階で、何年も前から言われているように必要な技術や資源は、すでにある。圧倒的に足りないのは、行政や企業、住民の理解や政治的決断。つまり、「闘う」意識と変わる「覚悟」。

 まずは、各地の反対運動に声を大にして言いたい。

 気候や生態系の危機真っ只中、対策に有効な風力や太陽光の事業計画が持ち上がるたびに「自然破壊」だの「土砂崩れ」だのとあること無いこと騒ぎ立てて実現を阻むのは、反科学やNIMBY、憎悪の極み。また、「CO2を減らすのに木を切るのは本末転倒」などと言うが、それこそが本末転倒で支離滅裂。そのような訴えのほとんどが確信犯で、温暖化懐疑論者も含まれていて、余計にタチが悪い。

 以前にも書いたが、日本の温室効果ガス削減には、国土の大部分が森林でも衰退の一途である林業の立て直しはもとより、「里山」を含む開発済の土地を効率的かつ迅速に活用することが前提。そのような場所に風車やパネルを設置する。木々の温室効果ガスの吸収量は樹齢や成長の度合いで決まるので、定期的な間伐や伐採、再造林や植林など常識。「相乗効果」を生む再エネから他の産業や文化、地域の歴史を知ることになる。

 開発行為なのだから土地改変は大なり小なり付き物だし、そのために環境アセスがあるし、そもそも地権者や自治会の同意無しに話は進まないが、地域住民「100%同意」は結果がそうなっても手続き上の条件にする必要は無い。賛成か反対か、民主的な議論を本当に望むのであれば。各地で再エネが増えなければ、主に既存の火力を使い続けるだけなので温室効果ガスは減らない一方で、国内でも温暖化に起因する災害は増え続ける。それでいいのかどうか、簡単な問い。
 
 論点のすり替えなどによって議論が滞っていることとして、自然や環境の保護名目の「予防原則」もまた恣意的に使われている。高度経済成長やバブル期から続く大型ダムや原発などの反対運動の合言葉だろうが、とにかく足元で開発させないという手前勝手な口実にすり替わっていて、今日の地域全体の利益や便益は完全に無視。眼の前の新たな危機を直視出来なくなっている。原発はともかく、ダムに関しては利水や治水、発電の面で再評価される時代に入っていることも留意すべき。

 その結果、日本はエネルギー資源をはじめ、じつに多くの産業を他国に大きく依存し続けている。出来上がった製品だけは買い取るが、製造過程に出た「公害」その他の問題は引き取らない。現地に押し付けたままの不公平なやり方。とはいえ、例えば、米国や豪の山火事、フィリピンの巨大台風、パキスタンやアフリカのモザンビークなどの大洪水など、どれをとっても日本人の生活と密接な結び付きがあり、その責任からは逃れられない。良くも悪くもグローバル化とは、そういうこと。

 次に国内の気候運動にも、これだけは言っておきたい。

 理想や目標として「市民」主体の電力にこだわり続けるのは大事だが、それだけでは発電量や融資の面で小規模に留まり、前代未聞のあらゆる危機にはとても太刀打ち出来ない。企業や行政が主体となっている様々な規模の事業計画も前向きに受け入れて議論するのは遅過ぎるくらいだし、「脱化石燃料」を全面に押し出さないなら全く説得力が無い。運動の参加者を増やすつもりなら、その「受け皿」が脆くて小さ過ぎるし、「天井」も低過ぎて誰も成長しきれない。

 「脱石炭」や、輸入燃料が海外で違法な森林伐採を引き起こしている最近のバイオマス火力批判だけでやり過ごせる時期は、とっくに過ぎた。太陽光は一部の計画や施工などで不備や不正があるのは、周知の事実。そのため、対策も講じられている。しかし、法的にも道義的にも根本から問われなければならないのは、最新鋭であろうと最後まで残ると見られる天然ガス火力であり、すでにほとんど無いにせよ、石油火力も同じ。「メガソーラー」を執拗に叩いても「ガス抜き」にすらならない。

 国内の環境団体の優先順位には、過去の「成功体験」か何か知らないが、科学や公正の前に強固なバイアスがある。草の根の闘いは気候や生態系、社会で最も危機に晒され、被害を受けながらも必死に抵抗し続け、生き抜こうとしている市民の姿勢に学ぶものであって、当事者性からかけ離れたところで勝手に選んだり決めたりしてはいけない。団体と直接関係が無い市民の声をあからさまに無視する態度が、すべてを物語っている。相手を対等に見れないと自ら言っているようなもの。

 選挙で毎回実施する生易しい政策「アンケート」も誤解や誤誘導を招く。どの党の候補者も美辞麗句を並べてくるだけなので、何の答えにもならないことくらい分からないはずがない。なのに、点数付けをするような安っぽい「マーケティング」は有権者にとって「毒」にはなっても「薬」にはならず、紛らわしいだけ。それも、ずっと同じ面子の内輪でやってきたので、客観視出来ないのだろう。変わらなければならないのは、何も政府や企業だけではない。日本の場合は、とくに。

 こんなところで地団駄を踏んでいられない。YIMBY仲間を求め、前に先に進むのみ!


参考:

Yes in Our Backyards Bill McKibben
Mother Jones May+June 2023 Issue
https://www.motherjones.com/environment/2023/04/yimby-nimby-progressives-clean-energy-infrastructure-housing-development-wind-solar-bill-mckibben/


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