なぜ、神話は生まれたのか?太古の時代から物語を語る人間の正体について綴る。
はるか昔の太古の時代。
太陽の眩しさに目を細めて、空を見上げた人がいた。
そのとき、彼はこう思った。
「なぜ、太陽は朝にのぼり、夕方に沈むんだ?」
家族や友人に聞いても、誰も答えを知らなかった。
ある日、髭の生えた年老いた長老に尋ねてみた。
すると長老はこう答えた。
「太陽の神と夜の神が争っているからだ。朝から夕方は太陽の神が優勢であり、夜は夜の神がこの世を支配している。もし、夜の神が勝てば、太陽は決して上ってはこないだろう」
太古の人々は、太陽が朝のぼり夕方に沈むのは、地球の自転が原因だと知らなかった。
でもその理由を知りたくてたまらなかった。
「世界を理解したい」という原始的な欲求を止めることはできないのだ。
だから世界の仕組みを説明する神話が生まれた。
人間には「知りたい」という欲求と、納得するために「物語を作る」機能がある。
これは最新の脳科学で証明されている。
僕らは理解できないことを、点と点を繋いで物語を無意識に作り、納得感を感じているのだ。
例えば、目の前に落ち込んでうずくまっている人がいるとする。
すると、あなたは「何があったんだろう」と考えるはずだ。
「きっと恋人と別れたんだろう」と。
この時、あなたの脳は「恋人と別れた」という根拠のない物語を語った。
この脳のストーリーテリングは、創造的な右脳の仕事のように思えるが、実は違う。
目の前に意味を付与するストーリーテリングは、知性的な左脳の仕事なのだ。
目の前の状況と、自分が理解できる材料と経験を踏まえて、自分が納得できる物語を作る。
これは左脳が目の前の状況を勝手に説明しているのだ。
脳科学者のマイケル・ガザニガは左脳を「解説者」と呼んだ。
僕らの脳に住む解説者は、太古の時代から僕らに解説をし続けている。
だから物語は強力な影響力を持つのだ。
「世界を理解したい」という原初的な欲求に根ざしているからだ。
脳に住む解説者の説明は、事実とは違うかもしれない。(日が昇るのは神々の戦いのせいではない)
それでも解説者は、説明をやめることができない。
僕らが「知りたい」と思うことをやめることができないのと同じなのだ。
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