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大腸カメラ検査前の食事と下剤〜検査の質を左右します〜

2021年5月16日に予防医療普及協会によるオンラインサロンYOBO-LABOの講演内容を一部抜粋・改変・追記して記事化しています。

大腸カメラを受けるための準備

大腸カメラの検査を受ける前には、腸の中に残っている便を一旦全部、キレイに洗い流す(=腸管前処置)必要があります。腸をできるだけキレイにした状態で検査を受けることで、病気の見落としのリスクを軽減することが可能になります。

具体的には
検査前日の食事を「低残渣食(=便に残りにくい食事)」に置き換える
②前日の就寝前と当日の朝にそれぞれ下剤を飲んで、腸を洗い流す

の手順が必要になります。この後詳しく解説します。

検査前日の食事について

一番簡単なのは、検査を受ける病院やクリニックで取り扱う「検査用食」に置き換える方法です。「エニマクリン」シリーズ(グリコ)が最も広く使われているかと思いますが、個人的な感想としては「思ってたより全然美味しいじゃん!」です。

他にも「クリアスルー」「サンケンクリン」(キューピー)や「ダルムスペース」(ハウス)などが使用されています。以前はこれに加えて「ボンコロン」もよく使用されていましたが、2019年で製造中止となりました。

ただ、若い方などはさすがに物足りない...と感じるかと思いますので、追加で何か口にしたい!と言う場合は下記を参考にしてください。

絶対に避けていただきたい食材
きのこ類・海藻類・野菜・種のある果物・ラーメン・そば・玄米・雑穀米・高脂肪食品
食べてもOK食材
白米・おかゆ・食パン(菓子パンや惣菜パン、ジャムやバターはNG)・素うどん・豆腐・卵・肉・魚

(※但し腹5分目を目安に、20時くらいまでに食事を済ませるようにしてください。翌日お食事をできないから...と前日の夜まで必死に食べようとする方がたまにいらっしゃいますが、腸の洗浄に時間がかかったり、検査ができなかったりする場合があります)

下剤の種類について

通常、下剤は2種類
①検査前日に腸の蠕動を刺激する下剤(錠剤)
②検査当日に腸の中を洗い流す下剤(飲料タイプ)
を併用して前処置を行います。

当日のむ飲料タイプの下剤で、現在最も多く普及しているのがマグコロールP・ニフレック・モビプレップの3種類です。それぞれの特徴を簡単に下図にまとめました。

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・マグコロールP
私は味の飲みやすさから、自身の検査時はマグコロールを選択しています。一般的に最も「飲みやすい」と言う方が多いですが、ご高齢の方や、心機能・腎機能が低下している患者様には使用しづらい側面があります。

・ニフレック
最も安全性に優れた全処置薬剤として世界的に使用されています。ご高齢の方や個人的には、心機能・腎機能が低下している患者様にも比較的安心して使用できるメリットがあります。その反面、味がなんとも言えず個人的には苦手ですが、中には「全然気にならない」と言う方もたくさんいらっしゃいます。

・モビプレップ
上記2つの薬剤は約2リットルの内服が必要で「量が多くて飲むのが大変」と言う方のために、少しでも少ない量で腸をキレイにできる前処置薬剤として開発された、比較的新しいタイプの下剤です。しかし、飲み方がやや煩雑で、高齢者の飲み間違いによる脱水などが懸念されます。

・その他
現状では上記3剤がメジャーですが、他にも新しいタイプの下剤の開発も進んでいます。より飲む量の少ない「ピコプレップ」、錠剤タイプの「ビジクリア」、モビプレップの飲み間違いがより少ない版「サルプレップ」などがあります。

なんでツラい思いをして下剤を飲むの?

腸のキレイになり具合は、無色透明な状態の5番から、まだ形のある便が残る1番まで、下図のようなスケールを用いて評価します。

便スケール

前処置で腸をどれだけキレイにできたか?が「よい検査を受けられるかどうか?」に直結します。具体的には、1〜3番の状態で行った検査と、4〜5番までキレイにした状態で行った検査とを比べると、病変の発見率は約2倍も違う、と言われています。[1]

また、発見が難しいと言われる「鋸歯状病変(これは後日別記事で解説します)」に関しては4番と5番とを比べても病変の発見率が1.7倍も違う、とされています。[2]

これらから、「いかにキレイになるまで前処置を頑張るか?」で検査の質が変わってくることが分かります。検査を受けられる方は(検査自体よりも)ここが一番の頑張りどころ...なんとか5番の状態を目指して頑張りましょう!

今日のまとめ

・検査の前日の食事は「腸に残らないもの」を
・下剤の種類について
・5番のキレイな腸を目指して頑張る!

参考文献

[1] Sulz MC, et al. Meta-Analysis of the Effect of Bowel Preparation on Adenoma Detection: Early Adenomas Affected Stronger than Advanced Adenomas. PLoS One. 2016; 11: e0154149.
[2] Tholey DM, et al. Adenoma detection in excellent versus good bowel preparation for colonoscopy. J Clin Gastroenterol. 2015; 49: 313-9.

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