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(42) ねずみさんへの手紙

つとめ先の瀬戸物店の定休日には、かずえさんは市の図書館を訪ねることにしています。いつも真っ先に足を向けるのは、児童書コーナーでした。他のどこよりも心に残る宝物が、この一郭に、たくさん詰まっている気がするのです。

それにまわりには、ひょっこりと思いがけないことを口走ったり、しでかしたりする、面白い子どもたちがいるのも、楽しみでした。

先週は、こんなことがありました。高学年物の『ひとすじの道』三部作を借りて帰り、さっそくページをめくってみると、マッチ箱ほどの大きさの、手作りの青い封筒が出てきました。

表書きには、
「チーズ市  パンくず町  ねずみゆうびん局、
 清水  ねずみ  さおりちゃんへ」

とあります。あらまあ、何だろう。 封筒を開けてみると、こう書いてありました。


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「ハッピーバースディ おくれて ごめんネ。
 これからもずっと 仲よくしてね。ミエ」

あらあら。かずえさんは自分あての、誕生カードをもらったみたいに、わくわくしました。本の好きなお茶目さんが、うっかり本にはさんで、忘れたのかしら。それとも、お話好きな女の子の、いたずらなのかな・・?

それにしても、ねずみゆうびん局に、届かなかったこの手紙、仲たがいの  元になりはしなかったでしょうか。

かずえさんはどうしたものかと 気になって、図書館へ行くたびに、つい女の子たちのようすを、見回してしまうのでした。

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