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(125) じゅずつなぎ

大きな台風が過ぎた翌日、かな子は鉄ちゃんたちに、クリ拾いにさそわれました。

「ついでに松ぼっくりも拾おうな」鉄ちゃんは、熊手をふりまわして言いました。
広くんは大きな布袋を引きずって、きょろきょろ獲物を探しています。

台風が荒れている最中も、いつもと違うスリルがありますが、その翌日というのも、あちこちに新鮮な発見がありました。青い屋根がわらのかけら、吹き飛ばされた看板、あれ、電信柱が・・!

坂道の端の電信柱が斜めになって、電線が一本たるんでいます。

鉄ちゃんは笑い声を上げて、熊手をひょいと電線にかけました。そのとたん、奇妙な声を上げて、鉄ちゃんは身をよじりました。

「どうしたの、鉄ちゃん」と、広くんが鉄ちゃんの青くなった顔をのぞきこんで、背中に手をかけました。

ぎゃあっ、広くんの悲鳴! 


IMG_20211114_0007じゅずつなぎ

「どうしたの?」と、かな子が広くんの腕をつかむと、ビリリリリッ、頭の先から足先まで、電流が貫きました。ぞおっ !ぎゃーっと声が出て・・手は広くんに吸い付き、髪の毛が先までピンと突っ立ったようです。3人は必死でもがいて引っ張り合って、なんとかやっと手が離れ、地面に転げました。

何もかも置き去りにして、3人は青い顔してヨタヨタと家へ戻りました。

「ばかっ! 死ぬとこだったぞ。あぶないことをして!」
かな子の父さんが怖い顔をして、ゴム手袋をはめた手で、電線に置き去りになっていた熊手を、取り戻しに行ってくれました。ゴム手袋をはめないと、ビリビリするんだ、とかな子は初めて知りました。


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