3章-(2) 高額税金と福祉
オランダの親子関係のことを訊いてみた。ほぼ全てが親子は別居の核家族 だが、国からの援助が行き届いていて、老人家庭にはヘルパーが送られ、 困ることは何もない。老人はなるべく自立して暮すよう、外出もできる よう、必要な人には電動車椅子も贈られる。
そのような財源はどうなっているの、と訊くと
「税金が高いのよ!」
と、ウイルとハトルがいっせいに言った。給料の40~60%が引かれると言う。ハトルたちで50%の由。でも、お金がどのように使われているかが明確に知らされてわかっているし、自分たちの老後も安心していられるので、税金は仕方ないと思う、ということだった。
ハトルに訊かれて、私は自分の家庭の話をした。夫の母と姉と同居生活を 40年続けてきたが、私は非常勤講師でフルタイムではないけれど、教師 を続けてきたので、子育てを助けてもらってとても助かった。子どもたちが独立した後も、私が2年前に病気をしたとき、義姉が家事の全てを代行してくれて、有り難かった、(スズメバチに刺された後、実家の兄の破産と離婚の相談を受けるうち不眠症になり、実母の死もあったが、こんな話は言わず)今でも助け合って暮していて、私はとても快適に幸せに思っている、とだけ話した。
ハトルは日本の暮らし方にいくらか興味があるらしいのだが、玄関で靴を 脱ぐ。1回の風呂に、家族だとしても何人かが入る。ひとつのへやを寝室に したり勉強部屋にしたり、時には客間にしたりなど、何通りにも使う家庭もあることに、気色悪そうな表情になった。
寝るのは、ふとんと畳の間に寝るの?ときくので、敷き布団と掛け布団の間に寝ることから、説明が必要だった。ハトルはますます奇異に感じたのか、いつか日本にいらっしゃい、泊ってくれると嬉しい、と誘っても、にこりともせず、答は保留。むしろ行きたくはない様子だ。オランダが最高! 景色、住まい、食べ物、福祉、全て最高、と思ってる風だった。
ウイルは一時血圧が200-120となったため、仕事を減らしてもらい、高血圧にいいベルギー製の特別なビールを飲んでいた。私の血圧は80- 40だと知ると、ハトルが
「ひどい低血圧ね。どんな症状になるの」と訊いた。
「疲れやすくて、朝に弱くて夕方元気になってくる。立ちくらみはあまり ないけど」
と答えると、赤ワインがいいよ、と元看護婦らしく忠告してくれた。
支払いの時、568Gの文字が見え、夕食だけで約36、000円!ドキンとした。大変な散財をさせたのだ。私はあんなに食べ残してしまったのに!
8:19の列車に乗るため、駅まで走るようにして急いだ。切符はハトルが全員分を往復買ってくれていたので、発車2分前に飛び乗り、座れた。
ウイルは駅前の電車道を横断するとき、ミカンを10個以上、車道に転がしてしまい、必死で拾っているところへ、電車が近づいて来て、大変だった。ミカンは何個か轢かれてつぶれたと聞き、ひとしきり皆で笑い転げた。
「今日はアムスへ来てよかった。とっても楽しかった」
と、私は何度も言った。同じ所を見ても、違った話と共に訊くと、面白く
なるし、別な発見もあるものだ。暑すぎず寒過ぎず雨も降らず、最高の行楽日和だった。
宿に戻ると10時を過ぎていたが、疲れた割には元気だった。
「オランダの食事は、美枝子には合っているんだね。チーズやバターや油物がある方が、元気そうじゃないか」
と夫が言った。そう言えばそうだ。私は時折具合が悪くて寝こむような時、おかゆよりポタージュかグラタンを食べたくな方方だから。
アンナにもらったアスピリンを、夫に渡した。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?