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(139) 甲の薬は・・

早苗あてに新町の叔母から、思いがけなく小荷物が届きました。
「クリスマスには早すぎるし、誕生日はとっくにすんだし」と、首を傾げながらも嬉しくて、早苗はすぐに開けてみました。

化粧品のひとそろいです。甘い大人の香り!
カードが添えてありました。

「就職内定おめでとう。社会人の第一歩は身だしなみから。今のうちに練習を始めて、4月にはゆとりでスタートしてくださいね」

晴れがましくて、ドキドキします。これまで成人式以外は、リップクリーム一つで通してきました。でも、会社訪問の時、きちんと化粧した先輩たちに、気押される思いもしました。いずれは自分もと覚悟していたのが、一挙に現実となったのです。

「内定式に間に合って有り難いわね」
母さんは早苗の手元の「化粧手順解説書」にほっとした顔になりました。化粧品販売ベテランの叔母が頼りというわけでした。


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3日後、早苗は薄化粧して、内定式に参列しました。その時の高揚気分が忘れられず、通学にも化粧するようになりました。

7日目、「何だか変!」
早苗のまぶたははれ、顔が赤くひりひりします。

「早苗も敏感症だったのね。あなたも私と同じ、無香料の特別製に変えなくては」と母さんが言いました。折角いただいたのに、と母娘で残念がった末に、叔母に使ってもらうことにしたのでした。

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