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ハンムラビ法典とチョコレートケーキ

____「目には目を、歯には歯を。」
私は何度“あいつら”に復讐しようと思ったか。

私は、大学2年の時、3人の男女にいじめられ、精神疾患を患った。
病気になっただけじゃない。
授業に出られなくて単位も落とした。
不健康に痩せた。
治療費も馬鹿みたいにかかる。
身体の傷も増えた。

初めて閉鎖病棟に入院した昨年の冬、私は“Pゾーン”と呼ばれる、隔離された病室に入院になった。
その部屋は、鍵が外からかかっていて中からは開けられない。
部屋にはベッドとトイレと鏡の無い洗面台があるだけの獄中のような部屋。
トイレットペーパーのホルダーすら無い。
部屋の壁は全てガラス張りで外から全て丸見え。
プライベートなんて皆無。

「なぜ私が隔離されなければならない?」
「“あいつら”こそ隔離されるべきなのではないか?」
一日中ベッドに横たわり、悶々と考えていた。
怒りが沸々と湧く。
でも暴れる気力も無い。
何においても無気力だった。

怒りが他に向いている時はまだマシだ。
その矛先が自分自身に向いた時、私は私を傷つけたくなる。
「いじめられたのは私が何かしたのではないか」
「私のこういうところが嫌いでいじめたんだよきっと」とか考え始めると涙が止まらない。
と言ってもこのPゾーンでは自分を傷つける術が無いようにされているので、何もする事が出来なかった。

____去年のクリスマス、私はPゾーンにいた。
病院もクリスマスを祝うようにナースステーションに飾り付けがされているのがうっすら見えた。
クリスマスの昼食はいつもより豪華だった。
デザートに小さいチョコレートケーキが出た。
私は大事に少しずつ食べた。
お皿を回収しに来てくれた看護師さんに言われた「メリークリスマス」が忘れられない。
あんなに優しい「メリークリスマス」は初めてだった気がする。

今年のクリスマスは、家族と過ごす予定だ。
チョコレートケーキを買って帰ろうかな。
去年より豪華なチョコレートケーキ。

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