パラダイスティ10
翌日の大学は驚くほど身に入らなかった。
何故こんなに頭に入らないか理由は明確だった。
昨日帰宅してから彼からメッセージが届いたのだ。
「今日は久々に再開できて嬉しかったです。もし良ければ近いうちまた会いませんか?」
ただのお誘いメールなのに何故か私の胸をザワつかせている。
そしてまだ返信ができていない。
机に置いてるスマホを見つめては何と返信しようか迷っている。
昨日自分で近藤さんにいつもどれくらい来るのか聞いておきながらいざ誘われると構えてしまったのだ。
しかも敬語で。
普通の友達ならフランクなはずなのにどうしてこうも彼は敬語を使ってきたのか。その考えが私にはまるで理解ができない。
「スマホずっと見つめてどうしたの?」
隣に座っている菜々子に小声で話しかけられた。
私は咄嗟にスマホを隠すように手に持った。
「別に。菜々子には関係ないよ。」
「もしかして誰かの連絡待ってるとか?」
待ってるのではない、私がまだ返事をしてないという言葉を飲み込んで違うとだけ答えた。
「ふぅ〜ん。どんな人?」
どうやら私は色々顔に出てしまっているようだ。
「……ただの幼なじみ。」
「幼なじみかぁ〜。いいなぁ〜。」
菜々子は言うだけ言って再び講義を聞き始めた。
私は深いため息をついてスマホに目を落とした。
私は彼とのメッセージを開いて「分かりました」とだけ送った。
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