彼女は一番好きな人と結婚しなかった

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さてさて、よなかくんと月曜の理屈
第一二一回は「彼女は一番好きな人と結婚しなかった」

第一二一回 

彼女は一番好きな人と結婚しなかった

僕のロマンスの血は母方の祖母から来ていると思う。彼女が時折してくれる若かりし頃の恋の話はシュワっとはじける爽やかさというよりじんわり広がる芳ばしさがある。羨ましい。しかし、残念ながらそのロマンスに祖父が登場することはない。

彼女は一番好きな人とは結婚しなかったからだ。

若かりし頃の祖母の会社の集合写真を見た時、「この人俳優さんみたいにかっこいいね」と指さした人が彼女のロマンスの相手だった。告白されるまで一度も喋ったことがなかったらしく「ただ、すれ違う度に目が合ってたの。そういう風に始まる恋もあるのよ。」という彼女の話は僕の胸を撃ち抜いたが、結局彼女は諸々の理由あってその彼ではなく、集合写真の中でみんなとは少し離れたところに立つ怪しい風貌の男と結婚した。集合写真なんだからちゃんと集合しろやと思うその男が僕の祖父である。祖母も母も、頭はいいが性格と風貌に難のある男と結婚している。謎すぎる。

祖母は一番好きな人とは結婚しなかったけれど、それでも僕には「結婚はした方がいい」と言う。何故?と聞くと彼女は「みんながしてるってことは、みんながするだけの理由がちゃんとあるのよ、きっと。」と呟くように言った。それは僕ではなく自分に言い聞かせるようで、辿ってきた道のりの正しさを祈る言葉のようで、彼女自身もはっきりとした答えを見つけられていないその誠実でシンプルな回答が、結婚とはいいものだと明確に理由を述べられるより数百倍良かった。


昨日、友人の結婚したい話を聞いたら久しぶりに祖母と話したそんなことを思い出した。結婚にまつわる話を聞く度に、祖母に言われたその言葉を思い出す。そして祖父の葬儀で声を上げて泣く祖母の姿が「結婚っていいものなのよ、きっと」の十分な証明に思えたことも。


その後、「じゃあ、どうすればいいの?」と祖母に恋愛のテクニックを聞いたら「すれちがいざまにチラっと見ること」と返ってきた。上級者だなあと笑った。

***追記:藤くん結婚おめでとうございまあああああああああああああああああああああああああああああああぁぁぁぁぁぁ

#エッセイ #日記