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小屋に出会う7「水面に浮かぶ小屋」

こんにちは。田んぼや畑、漁港や河川敷などにある物置小屋、作業小屋に魅せられて、小屋の魅力を書いています。
もしよろしければ、しばしお立ち寄りください。
前回は小屋はその風土にあった建てられ方をしているという話を書きました。
今回は、、、

小屋が浮く?

小屋は陸上にあるとは限りません。水上にもあります。小屋が浮くの?と思われるかもしれませんが、こちらです。

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車で橋を渡っているときに、ふと見ると岸辺に小屋があるのが目に入りました。
仕事の現場に向かう途中でしたので、場所をGoogle mapにチェックしておき、帰りに立ち寄りました。
往きはチラリとしか見えなかったのでわかりませんでしたが、船舶の係留所となっていて、よく見ると岸から少し離れています。
なんと!浮いている。

水上の小屋は初めてかも!ということで、とりあえず近くに行って、人がいたら話を聞いてみようと思います。
河川敷を歩くのは、子供の時も今も楽しいものです。空が広くて気持ちいい。

今回も聞いてみた

「こんにちはー。すみません。どなたかいらっしゃいますか」
男性「…、はい(怪訝そう)」
「突然すみません(慣れてる)。私、小屋が好きで小屋の写真を撮り歩いているのですが、橋の上からこちらの小屋を見かけて、写真を撮らせていただけないかと思いまして、、、」
男性「うーん、ちょっと待ってて」
そう言って奥に下がっていきました。

こうして文字に起こすと、変な勧誘よりもさらにあやしいですよね。
大丈夫、その辺りはまだ自覚しています。

男性と一緒に、歳のころ60歳前後とみられる女性が出てきました。

女性「はい、なあに?」

タバコとお酒で鍛えた喉を持っていらっしゃる、スナックのカウンターの向こうにいそうな感じの方です。

船宿という小屋

「突然にすみません。小屋の写真を撮り歩いていて、こちらの小屋を撮らせていただけないかと思いまして」
女性「小屋じゃなくてウチは船宿よ。船が泊まる場所だから船宿」
「あ、これが船宿ですか。確かに船が係留してありますね」
女性「そう、ボートとか船を係留する場所が必要でしょ。そのためのもの」

私がインスタグラムを見せながら趣旨を説明すると、怪訝そうにしていた女性が苦笑いしながらO.K.してくれました。ちょっとだけですが目が笑っています。良かった。

「ありがとうございます! この小屋はいつ頃からあるんですか?」
女性「小屋じゃなくて、船宿ね」
「あ、すみません。船宿ですね」

この仕事に誇りを持っていることが伝わってきます。

女性「今日は私が店番をしているんだけど、ここの社長は私の弟がやっててね。弟で3代目ね。河川の占有許可をもらって設置しているの。
台風なんかの増水する時は船の安全を確保しなきゃいけないでしょ、だから部屋は広くとってあって、船主も泊まれるようになっているの。そんな時は結構おおごとね。
昔は船宿はいっぱいあったんだけど、もうみんな廃業しちゃって。少なくなったわ。
写真を撮ってもいいけど、あまりはっきりと場所が特定されないようにしてね。
以前に映画のロケに協力したら、その映画を見た子どもが遊び場と勘違いして、いたずらをしに来てねぇ。困っちゃうわよ」

はい、このページを見てくださる方にそんな人はいないと思います。でもご迷惑がかかるといけないので、場所が特定できないようにトリミングした写真をアップします。

岸から見ると、小屋が台船の上に乗っているのがわかります。

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川の方から見てみましょう。ドラム缶を浮かべて、その上に艀が組まれているので揺れて何となく心許ない感じです。

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水運が盛んな地域の名残
7月の暑い日でしたが、川の上にいると気持ちの良い風が吹き抜けていきます。
水運が盛んだった河川では、船宿という営業形態は古くからあったようです。今では想像もつきませんが、江戸・東京は運河が発達した都市でした。その昔の賑やかな頃を想像すると、普段はあまりカメラを向けないプレハブの小屋も歴史の延長線上にあることが感じられ、ちょっと愛しく感じられます。

「ありがとうございました。おかげさまで、貴重な写真を撮ることができました」
女性「はい。それじゃあね」

川の流れと同じように、挨拶もあっさりとして気持ちいい。
そんな出会いの小屋、いえ、船宿でした。

浮かぶ小屋は他にもあった
ところで、この記事を書くにあたり他にも水上の小屋を撮っていないか、これまでの写真を見返したのですが、何と!やはりありました。こちらです。

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しかも、これは水に浮いているだけの小屋ではないと気付いたのです。
それはまた次の機会に。
                               2019.12.06
(つづく)

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