見出し画像

夜空に輝く星

「ルフレ!? まさか、お前……!」
「キ……サマ……ナニ……ヲ……?」

 僕の右手から出ている禍々しい闇魔法を見て、クロムは目玉がこぼれ落ちそうな程大きく目を見開き、ギムレーは怒りと恐れを抱いているかのような顔をしている。
 僕は真っ直ぐギムレーを見て、礼を述べる。

「お前が僕自信だったこと……今は感謝してるよ」

 目を閉じて、右手に魔力を強く込める。

「こうして、大切な人たちのために自分の命を使えるのだから」
「ナ……ナニ……ヲ……!」

 より強くなった闇魔法を見て、僕がこれからすることをギムレーは理解したらしい、やはり、世界を絶望に落としいれた邪竜でも、死ぬのは怖いようだ。

「お前のしたことは許せないけど、お前は僕自信でもあるんだ」

 そう、僕はギムレーの器、ギムレーがしたことは僕がしたことも同然なんだ、僕にはギムレーの犯した罪を償う責任がある。
 そう、だから……だから……

「だから、いっしょに行ってやるよ……」
「ア……アァァァァ…………!」

 全ての魔力を掛けた闇魔法を、全身全霊でギムレーに放つ、ギムレーの体を縦横無尽に闇魔法が走り回る、闇魔法はギムレーの体の隅から隅まで、これまでかと言うほど走り、ギムレーを苦しめた。
 ギムレーが絶叫しているのだろう、口を開けている、しかし、その叫びは声にならず、僕たちの耳に届くことはなかった。
 なぜなら、ギムレーが口を開き始めたその刹那から、かつて主を守っていた邪竜の鱗が、美しく、そして残酷なほどに、宙を舞っていたのだ。
 ギムレーが一歩、また一歩と後退していく、その間にも鱗は次々に、数を増しながら宙に舞っていく、五歩程後退したその時、最後を覚悟したのか、それとも、意識が無くなってしまったのだろうか、ギムレーが宙に体を預けた、クロムがギムレーの最後の反撃を警戒したのだろう、神剣ファルシオンを今一度構え直したが、クロムの予想は外れた。
 ギムレーから紫色の邪気とともに、天の川と錯覚してしまいそうな程の量の鱗が、剥がれ落ちる。
 今までルフレ達に強力なブレスを浴びせてきた、不気味な形相をしている本体とも言える邪竜が、この戦いで初めて聞く苦しそうな叫びをあげながら、重力にその頭を預けはじめた。
 それと同時にルフレの体が塵と化していく。

「ルフレ! お前ーー!」

 ルフレの体が塵と化していく様を見て、クロムが様々な感情が入り雑じった顔をし、こちらに手を差し伸べる。
 僕はその手を見た、その瞬間、記憶が突如蘇り始めた。
 草原でクロム達と出会った時のこと、今までの戦いはもちろん、そして、何より、自警団の皆と笑い、語りあったことの記憶が強く蘇った。
 僕の目から、自然と涙がこぼれ落ちる。

「ありがとう、クロム……ありがとう、みんな……また……会いたいな…………」

 僕は涙をこぼしながら、振り向き、苦労しながら、笑顔を作った。

「ルフレ! 駄目だ!! ルフレ!!!」

 クロムが泣き叫び、体を大きく使いながら、僕を必死に呼び止めようとしている。
 そんなに泣かないでくれ、僕がこんなに苦労して笑顔を作っているのに、そんなに泣かれたら、僕まで泣いてしまうじゃないか。
 僕の体が限界を向かえ、霧散し始める、僕は最後に皆に向かって手をあげた。

 ……皆……どこかであおう……

 ルフレの体は宙に美しく、華やかに輝きながら舞っていった。
 その輝きを見て、人々は何を思ったのだろうか。
 きっと多くの人が彼の死を悲しんだことだろう。
 その思いが、彼の運命を変えたのかもしれない。

サポートして頂くとモチベーションが上がるのでありがたいです!